予防のポイント+1
「お口の健康(口腔)」

1)口腔の機能(はたらき)について

80歳までに20本以上の歯を残そうという「8020運動」を知っていますか?この運動が開始された1990年当初は、「8020」を達成している高齢者は1割にも満たない状況でしたが、2017年に5割を超えました。これは高齢になっても自分の歯をしっかり残している人の割合が増えていることを意味しています。

お口には、食べ物を噛み(咀嚼)、食べ物の味や温度などを感じ(感覚)、安全に飲み込む(嚥下)などといった食べる機能のほか、音を作り出す(構音)機能や、表情を作るなど、コミュニケーションを通じた社会性に関わる機能があります。また、口腔内を潤す唾液には、消化作用や粘膜保護作用、自浄作用など様々な機能があり、口腔の環境の安定を図る役割を担っています。つまり、お口の健康は、食べる楽しみやコミュニケーションなど、生活に直結しています。
このため、高齢期には、歯の数だけではなく、全体の口腔機能の維持にも目を向ける必要があります。

2)お口の健康は、全身の健康につながっている

口腔機能は、栄養状態や全身の健康にもつながっているとても大切な機能です。

噛む力と食品多様性との関連

高齢者約700人を対象に行われた調査では、「よく噛めない人」は、「よく噛めている人」と比べて、エネルギー、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルの摂取量が5~10%低い結果となりました。また、食品群別にみても、「よく噛めない人」は、野菜類、海藻類、魚介類、肉類等を食べている量も、10~15%少ないことが分かっています。
これは、噛めないことで柔らかい食品を選んで食べるようになり、それがさらに口腔機能の低下につながり、栄養の摂取に影響をもたらす「口腔機能の負の連鎖」と言えるものですが、噛む力を維持することで断ち切ることができます。

噛む力と健康余命の関連

65歳以上の高齢者5,000人を対象とした調査によると、「さきいか・たくあん」くらいの固さの物が噛める人は、そうでない人に比べて、すべての年齢群で健康余命が長いことが分かりました

口腔機能低下がもたらす影響

口腔は、食べ物を噛む力(咀嚼)だけでなく、音を作り出したり(構音)、安全に飲み込んだり(嚥下)、多様な機能を有しています。地域で暮らす高齢者を4年間追跡した調査では、口腔機能が低下している人は、サルコペニアや要介護認定、さらには総死亡のリスクが高いことが明らかになりました。
つまり、いつまでも何でも食べられる健康なお口を保つことは、健康余命の延伸に重要な役割を果たしていると言えます。