予防のポイントその1
「食べる(栄養)」

フレイルを予防するためには、日々の食事を通じて良好な栄養状態を保つことが重要です。

1)低栄養の健康への影響

図1は、65歳以上の男女約1,000人を対象に、体格や栄養状態を示す指標(BMI、アルブミン)と総死亡との関係を調査した結果です。いずれの指標においても数値が低い群の方が高い群と比べて、死亡のリスクが1.6~1.65倍も高いことがわかりました。中年期では太りすぎに注意することが重要ですが、フレイル予防する上では、やせすぎや栄養不足を見落とさないようにすることが大切です。

※BMI...身長と体重から算出でき(体重÷身長÷身長)、肥満・やせを評価する指標。高齢者の方は、20以下が低栄養傾向とされています。
※アルブミン...血液中に含まれるたんぱく質の一種で、たんぱく質の栄養状態を評価する指標。4.0g/dLを下回ると、栄養不足の恐れがあります。

低栄養と死亡リスクとの関連/死亡の危険度/体格指数(BMI):太め(男:24以上、女:25以上)は1、細め(やせ)(男:20以下、女:20以下)は1.65/アルブミン:高い(男:4.3以上、女:4.4以上)は1、低い(低栄養気味)(男:3.8以下、女:3.9以下)は1.6/やせや低栄養気味だと・・・死亡リスクが約1.6倍に!※もともとの健康状態や、その他の検査の以上の有無の影響を除いて比較。出典)Shinkai et al.The Gerontologist 48(special issue Ⅱ),125,2008;新開省二,日本医事新報、4615,71‐77.2012

図1.低栄養と死亡リスクとの関連

2)良好な栄養状態を保つための食事

低栄養を予防するために、日々の食事ではごはん、パン、麺などの「主食」、肉・魚・卵・大豆製品などを使ったメイン料理の「主菜」、野菜・きのこ・いも・海藻などを使った小鉢・小皿料理の「副菜」をそろえて多様な食品を食べることを心がけましょう(図2)。

1食の中で主食、主菜、副菜を/主食(ごはん・パン・麺類)を毎食1品、主菜(肉・魚・卵・大豆製品のおかず)を毎食1品、副菜(野菜・きのこ類・いも類のおかず)を毎食1品、牛乳・乳製品・果物も毎日欠かさず

図2.主食・主菜・副菜をそろえた食事

高齢者を対象にした調査結果から、多様な食品を摂取している人ほど、筋肉量が多く、体力(握力や歩行速度)が高く(図3)、その後の筋肉量や体力の低下を予防できる可能性が示されました。
反対に、「主食・主菜・副菜」をそろえて食べる頻度が少ない人は、フレイルの該当リスクが高くなることも認められています。できるだけ毎日、2回以上は「主食・主菜・副菜」をそろえて食べられるよう、心がけましょう。また、高齢期はたんぱく質が不足しがちなため、特に肉・魚・卵・牛乳などの食品からたんぱく質をしっかりとることもポイントです。

毎日食べる食品の多様性と身体機能の関係/握力(多様性得点):低い(0-2点)27.7kg・中間(3-5点)28.6kg・高い(6点以上)29.1kg/通常歩行速度(多様性得点):低い(0-2点)1.31(m/s)・中間(3-5点)1.33(m/s)・高い1.34(m/s)/調整変数:性、年齢、研究地域、居住形態、教育年数、喫煙習慣、飲酒習慣、運動習慣、主観的咀嚼能力、既往歴(高血圧、糖尿病、がん、脳卒中、心疾患、慢性閉塞性肺疾患)、入院歴、BMI/引用)Yokoyama Y et al., j Nutr Health Aging, 2016; 20(7): 601-6

図3.毎日食べる食品の多様性と身体機能の関係

肉、魚介類、卵、大豆・大豆製品、牛乳、緑黄色野菜、海藻類、いも、果物、油を使った料理の10品目のうち、ほぼ毎日食べる品目の数と、身体機能の関係を表しています。