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化学物質の子どもガイドライン(食事編)

はじめに

 現代の私たちの生活においては、化学物質は豊かで快適な生活の恩恵を与えてくれますが、その一方で、私たちが望まない環境汚染や健康への影響の原因になることもあります。一般に、化学物質が人に与える影響は、大人よりも成長期の子どもにおいて大きいと考えられています。
 東京都では、化学物質による子どもへの影響を防ぐために、独自のガイドラインを策定し、子どもたちが安心して生活できる社会の実現を目指していくこととしました。

子どもの特徴

 子どもは大人よりも身体が小さく食事量や呼吸量も少なめです。都内の幼児(2歳から6歳)と大人の一日の食事量を比較すると、幼児は大人の半分です。
 しかし、体重1キログラムあたりの食事摂取量を比較すると、図1のように幼児は大人の2倍の量をとっています。

化学物質について知りましょう

1 化学物質について

 このガイドラインでは、食事から摂取されるさまざまな化学物質のうち、「ダイオキシン類」、「ビスフェノールA」、「ノニルフェノール」の3種類の化学物質を取り上げました。
 ダイオキシン類には、ポリ塩化ジベンゾ‐パラ‐ジオキシン(以下「PCDD」という。)、ポリ塩化ジベンゾフラン(以下「PCDF」という。)及びコプラナーポリ塩化ビフェニル(以下「コプラナーPCB」という。)の3種類が含まれます。発がん性や内分泌かく乱作用などさまざまな作用が疑われています。
 ビスフェノールAはプラスチックの一つであるポリカーボネート樹脂の主な原料です。内分泌かく乱作用が疑われています。
 ノニルフェノールは、主に界面活性剤(ノニルフェノールエトキシレート)の原料あるいは合成樹脂等に使用される酸化防止剤の原料として利用されています。内分泌かく乱作用が疑われています。

2 食事からの子どもたちの化学物質摂取量はどれくらいか

 東京都では子どもの食事を、離乳期(初期から完了期まで4期)及び幼児期に分け、それぞれ平均的な食事モデルを作成し、これらに含まれる化学物質の量を測定しました。
(1) ダイオキシン類について
 ダイオキシン類の、体重1キログラムあたりの1日摂取量の発育段階に伴う変化を図2に示しました。離乳初期から離乳完了期まで摂取量が増えていますが、幼児期以降、減少傾向になります。これはこの時期を境に体重の増加が、食事摂取量の増加を追い越すためと考えられます。
 なお、最も高い「幼児食」の値も、ダイオキシン類対策特別措置法で定められた耐容一日摂取量4ピコグラムティーイーキューパーキログラムパーデイの値を下回っていました。

(2) ビスフェノールAについて
 平成14年度の調査結果では、「幼児食」の「砂糖類・甘味料類・菓子類」食品群から検出され、幼児体重1キログラムあたりの1日摂取量は4.75ナノグラムパーキログラムパーデイと推定されました。平成15年度の「離乳食」の調査では、ビスフェノールAは検出されませんでした。

(3) ノニルフェノールについて
 平成14年度の調査結果では、「幼児食」の「魚介類」と「肉類・卵類」2つの食品群から検出され、幼児体重1キログラムあたりの1日摂取量は140.9ナノグラムパーキログラムパーデイと推定されました。平成15年度の「離乳食」の調査では、ノニルフェノールは検出されませんでした。

 以上の結果から、実際の市販食品を用いた食事モデルに含まれる、ダイオキシン類、ビスフェノールA、ノニルフェノールについては、現時点の知見で見る限りは、直ちに子どもたちの健康に重大な影響を与えるレベルとは考えられません。
 しかし、微量ではあっても子どもたちの食事に含まれている、これらの化学物質を長期的にとり続けていた場合の影響については、いまだ未知の部分も多いため、本ガイドラインの趣旨を踏まえ、これらの化学物質をできるだけ摂取しない食生活を心がけることが大切です。

日常生活で知っておきたいこと、心がけたいこと

 子どもたちの食事から化学物質の摂取量をできる限り少なくするために、お母さん方や給食調理担当の方々は、どのようなことを心がけ、また気をつけなければいけないのでしょうか。日常の食事に関する行動を順に追って考えてみましょう。

1 食事メニューを決めるときは「バランスの良い食生活を心がける」

 食事からダイオキシン類の摂取をできる限り少なくするために、ある特定の食品を食べ続けることを避け、いろいろなものを満遍なく食べることが大切です。
 このことは日常生活の中で、バランスのよい食生活を心がけるということになります。とても日常的な表現ですが、食事から摂取される化学物質の低減化を目指すうえでは、最も基本的で重要な視点といえます。

2 調理に際して

(1)野菜などの水洗いは十分に行う
 野菜などの調理では、通常、下処理の段階で水洗いを行います。旧厚生省の報告では、ほうれん草を水で洗浄しただけで、検出されるダイオキシン類の量が洗浄前の約4割から7割に低下しており、水洗いを十分に行うことが化学物質の低減化の点からも有効です。

(2)煮る、焼くなどの調理でも低減化できる
 多くの食材は、煮る、焼くなどの調理が行われます。旧厚生省の報告では、サバの切り身や牛肉などは煮る、焼くなどの調理により、ダイオキシン類が調理前の約6割から9割に低下しており、日常的な調理行為が化学物質の低減化という点からも有効です。

3 食器、特に合成樹脂製食器の取扱い

 食品中のビスフェノールAやノニルフェノールなどは、主に食器や食品の包装材などの合成樹脂に由来していると考えられます。これら合成樹脂の種類や特徴を十分に知っておきましょう。
(1)容器包装の種類を確認しましょう
 これまでにビスフェノールAやノニルフェノールなどが検出された合成樹脂としては、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどがあります。
 合成樹脂はこの他にも様々な種類があり、一見しての見分けは困難です。現在、市販食器類等に使用されている多くの合成樹脂は、その材質が略号マークで表示されています。
(2)適正な使用方法を守りましょう
 ポリカーボネート製食器やほ乳びんの業界団体は、材質などの研究開発を推進するとともに、東京都の要請を受け、使用上の留意事項なども作成しています。以下にその概略をまとめました。
 これらは、ポリカーボネート製容器の一般的な注意事項であり、合成樹脂の種類により、注意すべき点もそれぞれ異なっている場合がありますので、それぞれの製品の注意書きの内容を守ることが必要です。 

※ポリカーボネート製容器を使用する際の主な注意事項
〇洗うときは柔らかいスポンジ等を使用してください
 食器等の表面に傷がつくと、ビスフェノールAの溶出量が増えることが、東京都の調査で明らかになりました。柔らかいスポンジ等を使用してください。
〇洗剤の使用に際しては、取扱い説明書を確認し、適量使用してください。
 すすぎが不十分でアルカリ性洗浄剤が容器に付着していると、乾燥の条件によっては容器を傷め、ビスフェノールAの溶出を増やすことが明らかになりました。洗浄剤を使用するときは説明書をよく読み、濃度や時間に注意してください。また洗浄剤が残らないよう、十分にすすいでください。
〇熱湯消毒は3分程度にとどめてください。
 過度の熱湯消毒も容器を傷めます。熱湯消毒は3分程度にとどめてください。なお、表面に細かい傷がついたものや白濁したもの等は、新しいものとお取り替えください。

環境ホルモンを含む可能性がある主な合成樹脂と好ましくない使用方法
合成樹脂の種類 合成樹脂に含まれる可能性がある
可能性がある内分泌かく乱化学物質
好ましくない使用方法
ポリカーボネート ビスフェノールA(原料) 長時間熱湯に使用する
ポリスチレン ノニルフェノール
(安定剤等の分解物)
油ものに使用する
ポリ塩化ビニル

最新情報を収集し、考えてみましょう

 食事から化学物質の摂取やその健康影響について、日進月歩の研究が進展するなか、最新の知見を踏まえて考えていく必要があります。
 以下のホームページから、化学物質についての国及び東京都の調査結果などを見ることができます。
(ホームページアドレス(URL)は、令和4年8月8日現在)

◇国のホームページ
 食事調査等
・食品中のダイオキシン対策について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/kagaku/dioxin/index.html
・内分泌かく乱物質問題(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/other/naibunpi.html
・健康に悪影響を与える可能性のある魚介類中に含まれる物質等について(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/gyokai/busitu/index.html
・農畜水産物中のダイオキシン類の実態調査の結果について(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/gyokai/g_kenko/busitu/tikusui_dioxin.html
 検討会等
・内分泌かく乱物質の健康影響に関する検討会(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-iyaku_128715.html
・内分泌攪乱化学物質問題検討会(環境省・EXTEND2016における検討会)
https://www.env.go.jp/chemi/end/extend2016/commi_2016.html
・化学物質審議会 審査部会・管理部会 内分泌かく乱作用検討小委員会(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/other/files/naibunpitu_houkokusyo_set.pdf

◇東京都のホームページ
・東京都環境保健対策専門委員会化学物質保健対策分科会(東京都保健医療局)
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/kankyo_eisei/senmoniinkai/kankyousenmoniinkai/kagakubunkakai.html
・食品からのダイオキシン類等摂取状況調査結果(東京都保健医療局)
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/osen/shokuhin_dioxin.html
・食の安全都民フォーラム(東京都保健医療局)
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/forum/

おわりに

 このガイドラインは、子どもの食事の主な提供者であるご家族や、子どもを預かる施設の調理者の方々等が、身近な生活の中でできるだけ化学物質の低減化を図るために実行可能なことを中心にまとめたものです。
 最後に我々大人が子どもたちのために心がけなければならない5つの事項についてまとめました。

〇子どもの食事から化学物質を減らすための5項目
 身近な生活では
1 子どもたちには、日頃からバランスのよい食事の提供を心がけましょう。
2 調理は、野菜の水洗いなどの下処理を十分に行いましょう。
3 合成樹脂製食器の種類や適切な使用方法を知り、正しい食器の使い方を心がけましょう。
 今後に向けて
4 国に、食事中の化学物質に関する調査研究及び情報提供の一層の推進を要望します。
5 東京都は、今後とも最新情報の提供、共有化を進めるとともに、子どもたちの食事に関係する、都民や事業者の皆様と情報交換及び意見交換に努めていきます。

お問い合わせ

このページの担当は 健康安全部 環境保健衛生課 調査担当(03-5320-4493) です。

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