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2「複数のナッツ除去からクルミの治療開始に至った例」

最終更新日:令和3年10月28日 | 公開日:令和3年10月28日

受診時の状況

小学5年生男子の母です。
息子が7か月の時に小麦アレルギーがわかり除去をしていました。焼き菓子が食べられるようになったので市販されている米粉の焼き菓子を与えようとしたところ、ナッツが一緒に使われているものが多いことに気づきました。ナッツのアレルギーがないか不安を感じ、近所のかかりつけ医に相談したところ、血液検査をすることになり、陽性結果が出た複数のナッツで除去指導になりました。その後、小麦は解除になったのでナッツ類の除去だけを続けていました。

その後の状況

小学校入学を目前にして大人がいない場面での誤食が心配になりアレルギー専門医のいる医療機関を受診し、未摂取のままになっていたナッツについて一種類ずつ経口負荷試験を行い、食べられるもの、少量なら症状なく食べられるもの、全く食べられないもの、を整理していきました。クルミは食べた時に大きな症状が出たので、誤食時のリスクを少しでも減らしたいと思い、経口免疫療法を検討しましたが、つらい症状を経験したクルミを毎日食べることへの息子の不安感が払拭できず、親も本人の気持ちを思うと躊躇してしまい、これまでどおり完全除去を続けることにしました。

                

高学年になり、部活や塾などで過ごす時間が増えてくると「このままずっと命の危険と隣り合わせでは本人が困る。完全に治らなくてもいい、微量の誤食で大きな症状が出ないくらいにはしてあげたい」という気持ちが強くなりました。本人も成長からでしょうか、治療について前向きに考えてくれたので、主治医に相談したところ、

  • 経口免疫療法は治療法としてはまだ確立されておらず、必ずしも全員が食べられるようになるとは限らないこと
  • 今まで症状が出るから食べないようにしてきたクルミを毎日食べ続ける事そのものが大変であること
  • 長い期間かかることが多く、治療を進める中で症状が出現してしまうこともあり、時には大きな症状が出現することもあり得ること
                

等、リスクや注意点も十分に説明してくださった上で、「でも、誤食のリスクの方がはるかに大きい。だから一緒に頑張りましょう」と言っていただきました。大変な治療と思いましたが、主治医からの言葉も受け、クルミの経口免疫療法を開始することになりました。主治医から摂取量、増量、万が一症状が出た時の対処方法、などのご指導をいただきその通り進めました。
最初の頃は口の中の違和感が少しある位でしたが、増量した頃から症状が出てしまう日が度々ありました。「体調によっても症状が出たりすることがあるから」と言われていた通りでした。小さな症状でも出てしまうと明日の摂取が不安になりました。
ある日、大きな症状が出てしまい受診した際、主治医が「食べるのをよく頑張っているね。でも今日みたいなことがこれからもあるかもしれない。免疫療法をやめることもできるけど、先生はもう少し続けてみたらいいと思う。おうちの人も一緒にいてくれるし」と息子に話されました。「今やめたくない」という本人の気持ちを聞いて、私もまた一緒に頑張ろうと思いました。心の中では迷いもあったかも知れませんが、医師から少し背中を押していただき有難く思いました。

症状が出ない日が続いたと思うとある日突然症状が出たりと、前進ばかりではないのが免疫療法の大変さでもあり、経過観察にも気を抜くことが出来ません。一番大変な思いをしている子どもと共に医師の指示通り日々の治療を積み重ねています。いまは最初に設定した目標量が安全に摂れるようになりました。息子自身が納得したうえで治療を開始できたこともあってか、長くかかる治療を主体的に継続できているように思います。中学生になると行動範囲も広くなります。より安心安全に過ごせるように治療を進めていきたいと思います。

                    

医師からのワンポイントメッセージ

ナッツ類アレルギーは最近増加が著しい原因食物です。しかし、ナッツ類としてひとくくりに除去する必要はなく、例外(クルミとペカン、カシューナッツとピスタチオ)を除いて個別に除去対応します。もちろん特異的IgE値が陽性でも、診断の根拠にならないのは他の食物と同様です。
経口免疫療法は、食物アレルギー診療の経験豊かな専門機関で、慎重に行われ、非常に高いリスクと困難を伴います。このため安易に実施することは勧められません。
(昭和大学医学部小児科学講座 教授 今井孝成 先生より)

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独立行政法人環境再生保全機構

  

このページは東京都 健康安全研究センター 企画調整部 健康危機管理情報課 環境情報担当が管理しています。

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