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「小児科から内科への移行を経験した思春期患者の例」

最終更新日:令和5年8月17日 | 公開日:令和5年8月17日

患者の状況

息子には乳幼児期より乳の食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支ぜん息がありました。食物アレルギーは重症で小学校入学以降も完全除去が続いていましたが、小学3年生で「経口免疫療法」を開始し、負担が大きい治療でしたが「食べられるようになりたい」という強い思いを持って、小学生なりに治療を理解して治療に臨み、2年後に解除に至りました。解除になったとはいえ、アナフィラキシーを起こすこともありました。中学生までは体調の悪い時や5時間目に体育がある日は給食の牛乳は飲まない(または量を減らす)、修学旅行では除去食にしてもらうなどの対応をしました。高校生になると友達とのつきあいや外食が増え、どこで何を食べているか把握しづらくなることはあるものの、アナフィラキシーを起こさずに過ごしているようでした。本当にアナフィラキシーを起こさなくなったのか、本人が気を付けているから起こさないだけなのかはわからず、食物アレルギーに関してはまだ不安がありました。アトピー性皮膚炎と気管支ぜん息はコントロール良好でしたが治療は続いていました。
主治医は大学病院の小児科医で学童期からずっとお世話になっていました。高校卒業の時に「小児科卒業」について主治医から話があったのですが、これまでの治療経過を良く知る主治医から離れることに不安があり、決めることができませんでした。大学生になり、いよいよ独り立ちする時期が近づいたので、これからの治療について改めて主治医に相談することにしました。              
             

受診での指示・治療への取組状況

             

[主治医の意見]
現状として

  • もう成人である
  • 食物アレルギーの治療は終わっているものの今後もアナフィラキシーへの注意は必要である
  • アトピー性皮膚炎と気管支ぜん息の治療は続いている

今後について

  • エピペン®は処方医から処方してもらえる
  • ぜん息やアトピー性皮膚炎は引き続き治療が必要だが、このまま大学病院に通い続けるほどの重症度ではない                 
  • 大人の疾患に詳しく、アレルギー疾患に理解があり、通いやすいクリニックを探してはどうか
                

これまでの経過を共有していただきやすい同じ大学病院に院内紹介されると思っていたので、驚きと共に心細さを感じましたが、主治医は息子のQOLを考えた最良の提案をして下さったと思い、息子と共に納得することができました。

治療等への取組状況改善後・治療方針見直し後の状況

                

ところが、いざクリニック探しを始めたものの、医療機関の治療内容の情報はなかなか得られません。希望を満たすかかりつけ医を探すのは実際やってみるとかなり難しく、結局、気管支ぜん息は呼吸器内科クリニックへ、アトピー性皮膚炎は皮膚科クリニックへ、通院することにしました。内科についてはエピペン処方や大人の疾患についても相談しやすいクリニックを探そうと思っています。                 
息子はこれからもアレルギーとつきあいながら過ごしていきます。治療に関することを含めて、すべて自分自身で決めていかなければなりません。自分がアレルギーっ子として経験してきたことと医師や医療従事者の方々から指導していただいたことが、今後の生活と治療に生かされるよう願い、見守りたいと思います。    

医師からのワンポイントメッセージ

食物アレルギーを含め、アレルギー疾患を抱えながら思春期・成人期を迎える患者さんは少なくありません。
このとき受ける医療も、保護的な小児科的医療から自立/自律的な医療である成人期医療へと移り変わります(移行期医療)。                  
良質な医療を継続しつつ移行を完成させるには、突然変わるのではなく、思春期の前より移行期医療を意識した取り組みを始めることが望ましいとされています。 例えば食物アレルギーであれば、学童期には本人の理解力に合わせて病気の成り立ちや治療の必要性を説明したり、可能な範囲で少しずつセルフケア行動を教えたりすることで、子ども本人が能動的に自分事として向かい合える意識を育むと良いでしょう。 また、思春期・青年期までに本人が理解し説明出来るようにすべきこととしては、食物アレルギーの日常管理に必要な知識、定期受診の必要性、緊急時の対応や受診の方法、薬剤の使用期限の確認、学校や職場に受診への理解を求めること、などがあります。 中学校に入学したばかりと思っていたらあっという間に高校卒業、中高は忙しくてほとんどお母様しか来院していなかった、なんて話を聞くことがあります。 小児科医は本来子どもの成長・発達を支える医療を担う役割を持っております。小児科に通える年齢のうちに、お子さんが自立して自己管理ができるまでの支援について、遠慮せずに相談してみて下さい。
(国立成育医療研究センター アレルギーセンター 総合アレルギー科診療部長 福家 辰樹 先生より)

このページは東京都 健康安全研究センター 企画調整部 健康危機管理情報課 環境情報担当が管理しています。

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