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1「薬(ステロイド軟こう)を使用しても良くならない成人アトピー性皮膚炎」の場合

最終更新日:令和3年1月13日 | 公開日:令和3年1月13日

受診時までの状況

23歳、女性。
小さい頃からのアトピー性皮膚炎で、小中学校のころは、比較的落ち着いていて、湿疹が出たときに、ステロイド軟こうを塗っていました。それが、大学受験の頃から悪化し、大学1年の夏に、顔が真っ赤に腫れて通院するようになりました。それ以降は、定期的に通院し、ステロイドの塗り薬と保湿剤が処方されてきました。就職して症状はさらに悪化し、薬を使っていても、痒みで夜寝られず、掻き傷で血液や体液でシーツやパジャマが汚れるようになってきました。仕事が続けられるか、不安もありました。

受診時の状況

医師に相談しても、「薬(ステロイド軟こう)を塗るように」と、言われるだけで変わらず、アトピー性皮膚炎の専門医を受診しました。そこで下記のことを言われました。

  • ステロイド軟こうには、効果的な使用量1FTU(フィンガーチィップユニット:ステロイド軟こうを人差し指の先から第一関節までチューブから絞り出し(約0.5g)、それを手のひら2枚分の面積に広げる)があり、たっぷり使うように。
  • 長く使っても安全な薬なので、安心して。
  • ステロイド軟こうには、一般で言われているような、色が黒くなったり、骨がもろくなったりすることはない。副作用としては、何十年の長期の使用で、皮膚が薄くなる、血管が浮いてくるなどがある。
  • 早く良くして、それを維持するかが大事なので、良くなったら、プロアクティブ療法(週に2~3回ステロイド軟こうを塗って、再発しないように良い状態を維持する)へ移行する。
  • 保湿剤は、皮膚の細胞がきれいに並んでいないアトピーの人には必須で、こちらも朝晩1FTUでたっぷりと使うように。
  • 抗アレルギー剤の服用。
  • 入浴・シャワーは毎日し、泡で洗い強くこすらないように。
  • 環境を整えるように。(埃をためない、布団に掃除機をかける、規則正しい生活、ストレスをためない、など)
 

そして、ステロイド軟こう10g10本、保湿剤600g、頭皮のローション、顔用のプロトピック軟膏、飲み薬など大量に処方されました。     

その後の状況

あまりの量に戸惑いつつ、本当にこんなにたくさん使うのか不安になり、薬剤師に聞いてみると、医師と同じことを言われました。とりあえずやってみようと、その日の夜に言われたとおりに使ってみました。全身ベタベタでパジャマが体に張り付く感じで、不快ではありましたが、我慢して寝ました。すると、今まで痒みで寝られなかったのがうそのように、ぐっすり朝まで寝ることができました。今までの使用量が少なかったのだと実感しました。
朝起きて皮膚を見ると、まだ赤くガサガサしていますが、シーツやパジャマに付いた血液や体液の量は、かなり少なくなっていました。
4~5日後、赤い皮膚の中に普通の皮膚がぽつぽつと出てきました。掻きむしることも減ってきているようで、気分が楽になってきました。
2週間後、再診で、赤みが取れてきてガサガサも減ってきていて、きれいな皮膚が出てきていることをいわれ、嬉しくなりました。

                                      

医師からのワンポイントメッセージ

そうなのです。ステロイド外用薬を塗っているのに良くならないと悩んでいるアトピー性皮膚炎の患者さんの多くは、外用量が不足しているからなのです。
まずは、1週間、いや3日間べとべとに(FTUの量を)塗ってみましょう。100塗れば100効く薬を怖いので腰引けに30程度塗って、何とかぎりぎりを目指しても掻き壊してしまえば効果はゼロです。成育医療研究センターの大矢先生は「家が火事なのに水道の蛇口から水をかけて消火しているようなものです」と乳幼児のアトピー性皮膚炎の指導でもお母さんたちにFTUの重要性を強調しています。しっかり塗るとびっくりするほど改善しますので、ここまでできたら第1段階終了(仮免許)です。
次は、少し良くなっても外用を継続し、かなり良くなってもすぐ止めずに、プロアクティブ療法(※)でセルフコントロールを目指します。この第2段階がうまくできたら免許皆伝ですね。
さらに治療がうまくいっていない友人にこの指導ができれば、指導員免許を差し上げます。

※プロアクティブ療法
ステロイド外用薬を使用し皮膚が完全にきれいな状態になった後は、ステロイド外用薬の使用回数を徐々に減らしていき、皮膚をきれいな状態に保つ方法。再発の多いアトピー性皮膚炎の場合、リアクティブ治療ではうまくコントロールしにくいため、現在では、徐々にプロアクティブ治療が推奨されるようになってきました。

(東京逓信病院皮膚科 客員部長/あたご皮膚科 副院長 江藤 隆史 先生より)

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このページは東京都 健康安全研究センター 企画調整部 健康危機管理情報課 環境情報担当が管理しています。

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