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1「治療をしているがぜん息発作が減らない5歳児」の場合

最終更新日:令和2年10月16日 | 公開日:令和2年4月3日

受診時の状況

5歳児の母です。
  子どもは、運動するたびに咳が止まらなくなり、夜中の咳で寝不足になることもしばしばありました。受診した小児科で、ぜん息と診断され薬を処方されました。
処方薬は、吸入ステロイド薬と気管支拡張薬です。吸入ステロイド薬は毎日使用すること、気管支拡張薬は発作の時に使用するよう言われました。

毎日使用するよう言われた吸入ステロイド薬ですが、吸入後「口がイガイガする」と子どもが言うため、薬の説明書を見ると、副作用に「口腔刺激感」と書かれていました。先生からは「心配ない、違和感を軽減するためうがいをするように」と助言がありましたが、ステロイドは副作用が怖いときいていたため、不安もあり、状態が悪い時のみ吸入し、通院は続けていました。

その後の状況

1ヵ月しても症状は良くならず、先生から、改めて服薬状況について聞かれたため、正直に副作用が不安であること、あまり吸入していないことを話したところ、薬の作用機序や副作用等について、再度以下のような説明がありました。

  • ぜん息は、発作が起きていなくても、気道では常に炎症が起きているので、刺激を減らしたり、炎症を抑える治療が必要であること。
  • 吸入ステロイドは、気道の慢性的な炎症を鎮め、過敏性をなくすための長期管理薬であり、毎日定期的に使用することで、少しずつ気道の炎症が軽減し発作が起こりにくくなるものであること。
  • 全身に作用するステロイド内服薬とは異なり、吸入ステロイド薬は、気管支への直接投与のため、わずかな量で効果を発揮するので、全身性の重篤な副作用はほとんどないこと。吸入後に、うがいや水を飲んだりすることで局所の副作用を防ぐことができ、歯磨きや食事の前に服薬するなど、生活の流れの一つに組み込むと忘れにくくてよいこと。
  • 吸入薬は1~2週間で症状の変化が感じられること、継続すると日常生活での制限がなくなり外で友達と遊ぶなど楽しみが広がること。

親としては、薬の効果について、頭で理解はしましたが、少し怖い気持ちは残りました。
しかし、本人は、みんなと思い切り走って鬼ごっこがしたいから、毎日の吸入を頑張ると言いました。親子で話し合い、毎日の歯磨き前に吸入をすることにきめて、実行しました。
2週間程経つと夜間の咳が少なくなり、症状が改善したのを感じました。1~2か月後には発作がほとんどなくり、今では、子供はお友達と外で走り回ることができるようになりました。
子どもの元気な姿を見られることはもちろん、親も不安や罪悪感で涙したり、いらいらしたりすることが減り、家族に笑顔が増えたことが何より嬉しいです。

医師からのワンポイントメッセージ

処方された薬をきちんと使用しているのに症状が良くならない場合があります。
特に吸入治療は手技により薬剤の気管支への到達率が大きく異なるため、注意が必要です。
マスクを使用する場合にはマスクを顔に密着させることが大切です。
エアゾールのタイプではスペーサーを使用すると吸入効率が上がり副作用の軽減にもつながります。
ディスカスタイプでは毎回しっかりと吸い込む必要があります。
薬の効果や副作用に疑問がある場合には、遠慮せずに医師に相談しましょう。

(東京都立小児総合医療センター アレルギー科医長 成田 雅美 先生より)
 

※医師の所属・肩書は公開当時のものです。

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独立行政法人環境再生保全機構「おしえて先生!子どものぜん息ハンドブック」

ぜん息の症状、ぜん息発作が起きた時の対応、治療や吸入薬の使い方、ぜん息の悪化を防ぐための日常生活への対策など、ご家族向けに分かり易く説明されています。

独立行政法人環境再生保全機構「セルフケアのための小児ぜん息治療薬吸入実践テキスト」

最新の診療ガイドラインに基づき、ぜん息の病態や治療方法、ぜん息治療薬の種類・効能、各吸入器の正しい吸入方法、間違いやすいポイント(チェックポイント)などを紹介しています。

このページは東京都 健康安全研究センター 企画調整部 健康危機管理情報課 環境情報担当が管理しています。

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