保健所だより第67号 腸管出血性大腸菌感染症について
ヒトや家畜の腸管に存在する細菌のひとつが大腸菌です。
大腸菌のうち、毒素を産生して出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こすものを腸管出血性大腸菌といいます。O157のほか、O26やO111などが知られています。
腸管出血性大腸菌は、しばしば報道などでも見られるように、集団食中毒の原因となることが多くあります。とくに子供や高齢者の場合は重症化しやすく、生命に関わることもあるので注意が必要です。
O157は75度以上で1分以上過熱すると死滅するので、食中毒の起こりやすい季節にはとくに加熱調理を心がけましょう。
Q1 腸管出血性大腸菌感染症とはどのような病気ですか?
- 食品(生肉や生野菜など)や水を介して、特定の大腸菌(腸管出血性大腸菌)に感染した場合に発症します。感染者の一部は、水様の下痢、激しい腹痛、大量の血便、嘔吐、高熱、ときには重症となることもあります。感染者の多くは、無症状や軽症で終わります。
- 多くの場合は、感染してからおおよそ3日から8日後に頻回の水様便で発病します。
- 症状のある方の6~7%が、初発症状の数日から2週間以内(多くは5~7日後)に溶血性尿毒症症候群(HUS)、脳症などを発症するといわれています。溶血性尿毒症症状とは、尿量の減少、血尿、蛋白尿などを起こす状態で、意識障害や神経症状などを伴い、子供と高齢者に起こりやすい病気です。
Q2 腸管出血性大腸菌感染症にかからないためにはどうすればよいですか?
- 普段から帰宅時、調理前や調理中、食事の前、トイレの後、動物に触れた後などには石けんで手をよく洗いましょう。
- 食品はよく洗い、新鮮な材料を使いましょう。
- 食肉を生で食べることは控え、加熱不十分な食肉(牛タタキなど)を乳幼児やお年寄りに食べさせないようにしましょう。焼肉やバーべキューのときなどにも十分に加熱しましょう!
- 調理器具は使用のたびに洗剤でしっかり洗います。手指も同様によく洗いましょう。
- 食品や水のほか、患者や保菌者の便を介し、少ない菌量で感染します。このため、患者や保菌者の便で汚染した衣類、寝具、おむつは、塩素系消毒剤に浸してから洗濯しましょう。
- 患者さんは排便後、石鹸をよく泡立てて流水で手を洗ったあと、消毒用アルコールで消毒しましょう。また、患者さんや保菌者の排泄物などの世話をしたあとも十分に手を洗いましょう。
- 入浴やプールでも、周囲に感染させることがあるため、医師に相談し、菌が出なくなるまで、入浴やプールは控えましょう。
Q3 腸管出血性大腸菌感染症にかかったらどうすればよいですか?
- 心配なときにはまず医療機関で診療をうけましょう。必要に応じて入院となる場合があります。また入院でなくとも、医療機関の医師・看護師の指示に従ってください。
- 安静にし、水分を補給し、消化しやすい食事を摂取します。
- 水分も取れない場合は、輸液をする場合もあります。
- 下痢止め薬や痛み止めの薬の中には菌や毒素を体外に排出されにくくし、かえって症状の悪化につながるものがあります。自分の判断で服用せず医師の診察を受けましょう。
- 症状がなくなっても菌が排出されていることがあります。腸管出血性大腸菌感染症と診断された後は、菌が検出されなくなることの確認が必要となります。
- 児童・生徒の方は学校保健安全法の出席停止対象となります。診断されたら学校とよく連絡を取りましょう。
Q4 保健所はどのような対応をするのですか?
- 腸管出血性大腸菌感染症と診断した医師は感染症法等に基づいて保健所に届け出を行います。保健所では届け出を元に家庭訪問など行い、患者さんと面接します。
- 患者さんと同じ飲食物を食べた家族や友人が感染していないかどうか、患者さんから家族に感染していないかどうか確認するため、検便を行います。このときの便の検査は症状がなくても行われることがあります。
- 飲食店に従事している方で調理従事者など直接飲食物に触れる業務の方は、検便で菌が検出されなくなるまで業務の変更などが必要です。患者さんは飲食物を取り扱う業務への就業が制限されることがあります。
お問い合わせ
このページの担当は 多摩府中保健所 保健対策課 感染症対策担当 です。
