P.252 第6章 分析 1 障害者等、障害者団体、事業所の回答の比較 (1) スポーツや運動の実施 @ 現状  本調査に回答した障害者等1,463人のうち、この1年間で「週に1日以上」スポーツや運動を行った人の割合(スポーツ実施率)は50.6%だった。スポーツや運動をした理由としては、「健康・体力づくりのため」(67.1%)、「運動不足解消のため」(53.9%)、「楽しみや気晴らしのため」(45.1%)の割合が高かった。  一方、本調査に回答した障害者等1,463人のうち、この1年間にスポーツや運動を行ったことがない人は29.5%だった。スポーツや運動を行っていない理由は「活動したいが、身体的にできない」が50.8%で、年代が上がるほどその割合が高くなっているが、活動したいが「自分に合ったスポーツや運動の情報がない」(9.5%)、「一緒にやる人がいない」(8.6%)、「身近なところにスポーツや運動がやれる場所がない」(7.9%)ためにできない人も一定数みられた。スポーツや運動をしている人であっても、一緒にする人についての回答は「いない(一人)」(55.3%)あるいは「家族」(31.6%)の割合が高かった。  障害者等がスポーツや運動を行う機会の提供という観点から、障害者団体や事業所がこの1年間のイベントや取組でスポーツや運動を行ったかどうかをみると、障害者団体については、スポーツや運動を行った障害者団体が47.8%(11団体)、行わなかった障害者団体が52.2%(12団体)と回答が分かれた。他方、事業所については、スポーツや運動を行った事業所が67.8%、行わなかった事業所が19.5%と、比較的多くの事業所がスポーツや運動を取り入れていた。 P.253 A 必要な支援  スポーツや運動を行う際に必要な支援について、障害者等の回答は「適切な指導者」が25.5%と最も割合が高く、次いで「一緒に行う仲間」19.5%、「会場までの送迎」14.9%、「障害にあわせたプログラムの充実」14.6%、「施設の利用料減免」14.3%、「スタジアム、体育館などの建物や設備のバリアフリー化」14.1%であった。障害別では大きな違いはみられないものの、身体障害種別の視覚では「障害に対応した情報の提供や問合せ方法の充実」が、聴覚では「介助者や手話通訳などの支援」が他に比べて高い。  スポーツや運動の指導者について、イベントや取組にスポーツや運動を取り入れている11障害者団体、今後新たにイベントや取組にスポーツや運動を取り入れたい1障害者団体、計12障害者団体に尋ねたところ、「障害者団体の職員」(58.3%、7団体)、「家族、ボランティア」(33.3%、4団体)の回答が多く、有資格者が指導をしているケースは「その他」(33.3%、4件)のうち2件と多くなかった。事業所においても、スポーツや運動の指導者は「事業所の職員」が84.7%と大多数を占めた。  また、回答のあった全ての障害者団体(23団体)に、イベントや取組でスポーツや運動を行う際に必要な支援を尋ねたところ、「交通機関やまちのバリアフリー化」(30.4%、7団体)に次いで「適切な指導者」(21.7%、5団体)の回答が多かった。事業所においては、「交通機関やまちのバリアフリー化」は9.3%にとどまったが、「適切な指導者」の割合が最も高く42.3%だった。  障害者団体ヒアリングでは、地域でのスポーツの機会がほしいという意見があった(視覚、知的)。また、スポーツを行う際に必要な用具や備品(例:吹き矢の道具、サウンドテーブルテニスに用いるテーブル、徒競走でスタートを合図するための旗)の費用がかかることや、設置されている会場が少ないこと、そのために用具や備品を都度会場まで持参することの負担感についての意見があった(肢体不自由、視覚、聴覚)。障害者用のプール(重症心身障害児者)や家族で使える更衣室があるとよい、更衣の手伝いについてスタッフの声掛けがほしい(知的)という意見もあった。   P.254 (2) スポーツの観戦 @ 現状  障害者等のこの1年間でのスポーツ観戦については、「テレビ、ラジオ、インターネット等で観戦したことがある」の割合が高く(69.0%)、「スタジアム・体育館などで実際に観戦したことがある」人は14.4%、「沿道で実際に観戦したことがある」人は2.3%にとどまっている。また、「観戦したことはない」という回答も19.1%みられた。  障害別にみると、全ての障害で「テレビ、ラジオ、インターネット等で観戦したことがある」が5割以上で最も高い。一方、知的障害者は「観戦したことはない」(32.3%)が他の障害に比べて高くなっている。 A 必要な支援  スポーツを観戦する上で必要な支援について、障害者等の回答は「スタジアム、体育館などの建物や設備のバリアフリー化」(22.0%)、「障害者に配慮した観戦席の充実」(21.7%)、「観戦料の減免」(20.2%)の順に割合が高かった。障害別では、身体障害者は「スタジアム、体育館などの建物や設備のバリアフリー化」が、知的障害者は「障害者に配慮した観戦席の充実」が、また身体障害者の中では聴覚障害者の「テレビ・インターネット等の文字情報、字幕の対応」が他の種別に比べて高い。  障害者団体の回答をみると、「スタジアム、体育館などの建物や設備のバリアフリー化」(47.8%、11団体)、「障害者に配慮した観戦席の充実」(34.8%、8団体)、「障害に対応した情報の提供や問合せ方法の充実」(34.8%、8団体)の回答が多く、上位2つまでに挙げられた回答は障害者等と同じだった。  事業所の回答は「観戦料の減免」(46.5%)、「障害者に配慮した観戦席の充実」(41.6%)、「会場までの送迎」(38.8%)の順に割合が高かった。「障害者に配慮した観戦席の充実」については、障害者等、障害者団体、事業所のいずれも回答の割合が高かった。  また、障害者団体ヒアリングでは、スタジアムや体育館などの建物で、障害者等と介助者が隣で一緒に観戦できるようにしてほしい(肢体不自由)、スタッフが障害者等とのコミュニケーションに慣れてくれると有難い(聴覚)との意見がみられた。   P.255 (3) 文化、芸術活動 @ 現状  本調査に回答した障害者等1,463人のうち、この1年間に行った文化、芸術活動は「コンサートや映画、演劇などに行く」(41.9%)、「美術館、博物館などに行く」(30.4%)の割合が高い一方で、「特にない」人も29.0%みられた。  障害者団体は「講演会、セミナー、各種講座を開催する」(52.2%、12団体)、「講演会、セミナー、各種講座に参加する」(39.1%、9団体)、事業所は「動物園や植物園、水族館などに行く」(47.1%)、「音楽活動をする」(34.9%)の割合が高かった。それぞれの障害者団体あるいは事業所で様々な取組を行っている様子がうかがえる一方で、障害者団体の17.4%(4団体)、事業所の23.1%で「特にない」となっている。  障害者等の回答で最も多いコンサートや映画、演劇に関して、障害者団体、事業所のいずれも「コンサートや映画、演劇などを開催する」の割合は高くなく(障害者団体17.4%(4団体)、事業所8.8%)、障害者等が個人で文化、芸術活動を楽しむ様子もみられた。 P.256 A 必要な支援  必要な支援について、障害者等の回答では「適切な指導者」が16.8%、「施設の利用料減免」が16.3%で、スポーツや運動と同様に指導者不足を挙げる意見がみられた。  障害別でみると必要な支援がやや異なり、身体障害者は「文化、芸術活動を行う施設のバリアフリー化」、「交通機関やまちのバリアフリー化」を、知的障害者は「障害にあわせたプログラムの充実」を、精神障害者は「施設の利用料減免」を、難病医療費助成者は「特にない」を、また身体障害種別の聴覚では「介助者や手話通訳などの支援」、「障害に対応した情報の提供や問合せ方法の充実」を、音声・言語・そしゃく機能では「介助者や手話通訳などの支援」を、上肢、下肢、体幹、脳原性運動機能では「文化、芸術活動を行う施設のバリアフリー化」、「交通機関やまちのバリアフリー化」を挙げる人の割合が高い。  障害者団体においては、「障害にあわせたプログラムの充実」(30.4%、7団体)、「障害に対応した情報の提供や問合せ方法の充実」(30.4%、7団体)の回答が多く、障害者等とはやや異なる傾向がみられた。事業所も障害者団体と同様に、「障害にあわせたプログラムの充実」32.4%の割合が最も高く、次いで「適切な指導者」が30.2%だった。  また、障害者団体ヒアリングでは、障害者等と介助者2人分の入場料が必要となるため、経済的な負担が大きいとの意見がみられた(視覚)。大学の公開講座や地域において、障害者を対象とした講座があると参加しやすい(知的)、文化、芸術活動に関する発表の場が少ない(知的)、文化、芸術活動の取組に地域差がみられる(知的)という意見もあった。   P.257 (4) ボランティア活動 @ 現状  障害者等のうち、今までに何らかの分野のボランティア活動に参加したことがあるのは31.5%、今後何らかの分野の活動に参加したい人の割合は32.1%だった。  障害者等が参加したボランティアの内容は「イベント等の会場準備の手伝い」(12.4%)、「清掃」(10.9%)が上位に挙がっており、今後参加したいボランティアの内容も「イベント等の会場準備の手伝い」の割合が他の選択肢に比べて高かった(11.1%)。  障害別にみると、難病患者が何らかの活動に参加した割合が高く、特に「お祭り、町会・自治会などの地域の活動」で高くなっている。一方、知的障害者は「特にない」が他の障害に比べて高い。  ボランティア活動について、障害者団体の意向を尋ねたところ、「それぞれの当事者会員に任せたい」という障害者団体が多かった(65.2%、15団体)。障害者団体として「積極的に支援したい」と回答したのは1団体のみで、支援に取り組む様子はあまりみられなかった。  事業所についても同様で、事業所としての考えは「それぞれの利用者に任せたい」の割合が最も高く39.4%、「支援したいが難しい」が20.8%であった。 P.258 A 必要な支援  障害者等がボランティア活動をする上で必要な支援について、障害者等の回答は「特にない」を除くと、「ボランティア活動に関する情報提供の充実」(15.0%)、「一緒に行う仲間」(14.6%)、「障害に対応した情報の提供や問合せ方法の充実」(12.9%)の順に割合が高く、情報提供に関する内容が上位に挙がった。また、障害別や身体障害種別では上位に挙がっている支援に大きな違いはみられなかった。  障害者団体、事業所の回答をみても「障害に対応した情報の提供や問合せ方法の充実」(障害者団体39.1%(9団体)、事業所29.5%)、「ボランティア活動に関する情報提供の充実」(障害者団体30.4%(7団体)、事業所38.6%)の回答が多い。  また、障害者団体ヒアリングでは、パソコンのスキルを身につけてボランティア活動をしたいと思っても、勉強できる環境が整っていないので、現状は活動できていないとの意見がみられた(聴覚)。やりたいものがあってもサポートが必要という課題があるという意見もあった(視覚)。 P.259 (5) 情報アクセシビリティについて @ 現状  コミュニケーションや連絡の手段は、学校・施設・職場、家庭、その他の場所(駅やまちなど)のいずれにおいても、「携帯電話、スマートフォン、タブレット、パソコン」(学校・施設・職場51.1%、家庭60.8%、その他の場所52.3%)や「メール」(学校・施設・職場30.3%、家庭34.9%、その他の場所23.9%)の割合が高い。 A 必要な支援  情報アクセシビリティの観点から必要な支援は「必要な情報をわかりやすく説明してくれる人がほしい」(22.4%)、「誰もが読みやすい文字などを使用してほしい」(22.2%)等の配慮を求める障害者等の声が多く、誰もが分かりやすい情報提供が求められている。  障害別、身体障害種別にみると、視覚は「それぞれの障害者が情報入手できるようさまざまな媒体(音声、点字、テキストデータなど)で提供してほしい」、「誰もが読みやすい文字などを使用してほしい」が、聴覚は「問い合わせ先は電話番号だけでなく、ファックスやメールアドレスを載せてほしい」、「手話、筆談で対応できる人を増やしてほしい」が他の身体障害種別に比べて高い。知的障害者は「わかりやすい文言・表現・絵文字(ピクトグラム)を使用してほしい」が他の障害に比べて高い。  障害者団体からは「それぞれの障害者が情報入手できるようさまざまな媒体(音声、点字、テキストデータなど)で提供してほしい」(47.8%、11団体)、「問い合わせ先は電話番号だけでなく、ファックスやメールアドレスを載せてほしい」(47.8%、11団体)、事業所からは「わかりやすい文言・表現・絵文字(ピクトグラム)を使用してほしい」(50.9%)、「必要な情報をわかりやすく説明してくれる人がほしい」(47.3%)という意見が多かった。表現方法に配慮しつつ、様々な方法で情報提供を行い、かつ丁寧な説明を求める意見がみられた。   P.260 (6) 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会について @ 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会への関心、関わり方  東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会については、障害者等の多くが関心をもっており(東京2020オリンピック74.6%、東京2020パラリンピック65.3%)、注目を集めていることが明らかになった。  具体的な関わり方については、「テレビ、ラジオ、インターネット配信等で観戦したい」(東京2020オリンピック58.2%、東京2020パラリンピック53.6%)、「スタジアム・体育館などで観戦したい」(東京2020オリンピック31.6%、東京2020パラリンピック22.5%)の順に割合が高くなっている。  一方、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会への関わり方について障害者団体の回答をみると、「障害者団体として、スタジアム・体育館などで観戦したい」(東京2020オリンピック69.6%、16団体、東京2020パラリンピック65.2%、15団体)が「障害者団体として、テレビ、ラジオ、インターネット配信等で観戦したい」(東京2020オリンピック30.4%、7団体、東京2020パラリンピック26.1%、6団体)の回答を上回っている。  事業所の回答も同様で、「事業所として、スタジアム・体育館などで観戦したい」の割合が高く(東京2020オリンピック52.4%、東京2020パラリンピック51.5%)、次いで「事業所として、テレビ、ラジオ、インターネット配信等で観戦したい」(東京2020オリンピック29.3%、東京2020パラリンピック28.4%)の割合が高かった。障害者団体や事業所は、イベントや取組として東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の観戦を企画する意向があることがうかがえる。 P.261 A ボランティアとしての参加  東京2020オリンピック、東京2020パラリンピックのいずれかに「ボランティアとして関わりたい」と回答した障害者等163人に、参加したいボランティア活動について尋ねたところ、「会場内での観客・大会関係者の誘導」(42.9%)、「チケットチェック等の入場管理」(41.7%)の割合が高かった。いずれの選択肢も、本調査の「今までに参加したことのあるボランティア活動内容」の設問で上位に挙がった「イベント等の会場準備の手伝い」に内容が近い。一度でも経験すると内容がイメージしやすく、参加意識が高まるものとみられる。障害別にみると、自立支援医療受給者や精神障害者は、「会場内での観客・大会関係者の誘導」など様々なボランティア活動への参加意向が高い。  障害者団体に、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会へのボランティアとしての参加について尋ねたところ、「障害者団体として、ボランティアとして関わりたい」、「当事者会員がボランティアとして参加することを勧めたい」と回答した障害者団体は、23団体のうち、東京2020オリンピック5団体、東京2020パラリンピック7団体にとどまった。参加したいボランティア活動は、東京2020オリンピック、東京2020パラリンピックのいずれも「競技会場の最寄駅から会場までの観客案内」(東京2020オリンピック60.0%、3団体、東京2020パラリンピック42.9%、3団体)、「選手村でのハウスキーピング等」(東京2020オリンピック40.0%、2団体、東京2020パラリンピック42.9%、3団体)の回答が多かった。  一方、事業所は、「事業所として、ボランティアとして関わりたい」、「利用者がボランティアとして参加することを勧めたい」と回答した事業所は、東京2020オリンピック23.4%、東京2020パラリンピック32.7%と障害者団体より参加意向が高い。参加したいボランティア活動は、東京2020オリンピック、東京2020パラリンピックのいずれも「選手村・会場内での清掃」(東京2020オリンピック53.8%、東京2020パラリンピック48.6%)、「選手村や会場の食堂での配膳」(東京2020オリンピック46.2%、東京2020パラリンピック42.5%)の割合が高く、より積極的な関わりを求めている。 P.262 B 必要な支援  東京2020オリンピック、東京2020パラリンピックのいずれかに「ボランティアとして関わりたい」と回答した障害者等163人に、ボランティアを行う際に必要な支援を尋ねたところ、「ボランティア活動に関する情報提供の充実」(52.1%)、「障害に対応した情報の提供や問合せ方法の充実」(39.9%)、「一緒に行う仲間」(34.4%)の順に割合が高かった。また、障害別や身体障害種別で上位に挙がっている支援に大きな違いはみられなかった。  障害者団体の回答は、東京2020オリンピックについては「障害に対応した情報の提供や問合せ方法の充実」、「ボランティア活動に関する情報提供の充実」、「介助者や手話通訳などの支援」と、「会場や選手村などの建物や設備」や「交通機関やまち」のバリアフリー化に関する支援、「一緒に行う仲間」がいずれも60.0%(3団体)と、幅広い回答が挙げられた。東京2020パラリンピックについては、「一緒に行う仲間」、「介助者や手話通訳などの支援」が71.4%(5団体)だった。事業所の回答で最も割合が高かったのは「ボランティア活動に関する情報提供の充実」(東京2020オリンピック57.7%、東京2020パラリンピック58.2%)で、次いで「活動の場までの送迎」が東京2020オリンピック51.9%、東京2020パラリンピック50.7%だった。  本調査の「障害者等がボランティア活動をする上で必要な支援」で挙げられた回答と同様に、情報提供に関する支援を求める回答が多く、情報提供の取組を進めることが障害者等のボランティアへの参加促進、支援のポイントになることが明らかになった。   P.263 2 企業の回答の特徴 (1) 障害者を主な対象やテーマとしたイベントやプログラム  企業においては、81社の51.9%(42社)が障害者を主な対象やテーマとしたイベントやプログラムを実施しており、その42社のうち「障害者のスポーツ活動を支援するもの」が61.9%(26社)、「障害者と健常者が一緒に芸術活動、スポーツ活動をするもの」が50.0%(21社)であった。また、文化、芸術活動では、少数ではあるが「障害者の芸術活動を支援する」イベントやプログラムを実施する企業がみられる(42社中26.2%、11社)。一部の企業ではあるが、障害者がスポーツや芸術活動を行う機会の提供が行われている。  障害者を主な対象やテーマとしたイベントやプログラムを実施したことにより、どのような効果があったかについて、「社員の障害者に対する理解が深まった」の割合が最も高く81.0%(34社)となっている。次いで、「障害者のニーズが把握できた」が54.8%(23社)となっている。  ただし、参加した障害者の障害種別は、身体障害者(85.7%、36社)、知的障害者(59.5%、25社)が多く、精神障害者(28.6%、12社)、難病(11.9%、5社)は比較的少ない。  また、「参加する障害者が少ない」(23.5%)、「イベントやプログラムの効果的な周知方法がわからない」(22.2%)、「障害に配慮した運営が難しい」(21.0%)、「イベントやプログラムの内容が障害者のニーズに合っているかわからない」(19.8%)といった課題が挙げられている。  企業における障害者のボランティア活動を支援する動きは活発でなく、障害者を主な対象やテーマとしたイベントやプログラムで「障害者のボランティア活動を支援するもの」を実施した企業は1社のみだった(42社中、2.4%)。この1年間で回答企業が実施したイベントやプログラム(障害者を主なテーマとしたものも、そうでないものも含む。)で障害者がボランティアとして関わった実績がある企業の割合も13.6%であった。   (2) 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会のために取り組んでいること  東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会への障害者参画のため、企業が現在取り組んでいることについては、「障害者スポーツの支援」(53.1%)、「障害者に対する理解を促進する取組」(38.3%)の順に割合が高く、今後協力したい取組も同様であった。  障害者スポーツの競技やアスリート等への支援への関心については、約7割の企業が関心を持っており(関心がある59.3%、やや関心がある11.1%)、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会、障害者スポーツに対する企業の関心の高さが明らかになった。 P.264 3 今後の取組に向けて (1) 障害者等と企業等とのニーズのマッチング  今回の調査では、障害者等の68.9%がこの1年間にスポーツや運動を行っている一方、必要な支援として、「適切な指導者」(25.5%)、「一緒に行う仲間」(19.5%)等が比較的多く挙げられた。  また、この1年間に文化、芸術活動を行っていない人が29.0%、今までに何らかのボランティア活動に参加したことがある人が31.5%と、文化、芸術活動、ボランティア活動の機会も十分でない。  企業調査の結果をみると、51.9%(42社)が、障害者を主な対象やテーマとして実施したイベントを実施しているものの、「参加する障害者が少ない」(23.5%)、「イベントやプログラムの効果的な周知方法がわからない」(22.2%)、「障害に配慮した運営が難しい」(21.0%)、「イベントやプログラムの内容が障害者のニーズに合っているか分からない」(19.8%)といった課題が挙げられている。一方、障害者を主な対象やテーマとしたイベントやプログラムを実施した企業の81.0%が、実施の効果として「社員の障害者に対する理解が深まった」と回答しており、こうした取組が障害者等への理解を深め、社会参加を促進するために有効であることが推察される。  このような現状を踏まえ、今後、障害者等がスポーツや運動、文化、芸術活動、及びボランティア活動を行う機会を増やし、障害者等の社会参加を促進するためには、障害者等及び障害者団体、事業所と企業をつなぎ、それぞれの担当者がそれぞれのニーズや課題を伝え合い、情報交換をしたり、助言をし合ったりできる関係を構築することは有効である。そのために、関係者が定期的に集まる機会(例:連絡会の開催)を設けること、またその場を活用して、障害者等及び障害者団体、事業所のニーズ、及び企業が障害者支援に関するCSR活動を進める上で抱えている課題や必要としている助言を丁寧に引き出し、つないでいくことが重要である。  また、企業が、障害者等のスポーツや運動、文化、芸術活動、あるいはボランティア活動を支援したいと考えたとしても、実施内容や手順について参考になる情報がないために、取組を始められないことが考えられる。また、既に取組を進めている企業にとっても、他企業の取組を知ることは今後の戦略を策定する上で有用なことと考えられる。  そこで、先進事例を収集し、ホームページ等で公開することによって、先進的に取り組む企業を評価するとともに、情報提供を図ることや、セミナーや研修の開催により、これから取組を始める企業にノウハウを提供する方法も考えられる。   P.265 (2) 指導者の育成・マッチング  障害者等がスポーツや運動を行う際に必要な支援として、障害者等、障害者団体、事業所のいずれからも「適切な指導者」を求める回答が多かった。現在は、障害者団体や事業所の職員や家族が指導を行っている例が多く、有資格者が指導している例は少なかった。  同様の傾向が文化、芸術活動についてもみられ、障害者等の余暇やスポーツ活動全般において指導者不足の傾向がみられる。  安全面及び指導の質の面の両方から、適切な指導者は欠かせない。一部の競技性の高いスポーツや専門的な文化、芸術だけでなく、障害者等が身近な地域で気軽にスポーツや運動、文化、芸術活動を楽しめるよう、指導者の育成、確保に努め、障害者団体や事業所に紹介する仕組みを設けることが求められる。具体的には、スポーツの競技団体や大学、芸術家の団体、あるいは企業に周知を図り、より障害者等への関心を高める取組が必要である。 P.266 (3) ボランティアに関する情報提供等  これまで何らかのボランティア活動に参加したことのある障害者等は31.5%で、今後何らかのボランティア活動に参加したい障害者等も同程度の割合であった(32.1%)。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会で「ボランティアとして関わりたい」と回答した障害者等の割合は約1割(東京2020オリンピック10.0%、東京2020パラリンピック9.6%)にとどまったが、背景には、これまでに経験のないイベントでかつ実施までに期間があること、どのようなボランティアができるのか分からないなど具体的なイメージがわかないこと等があることも考えられる。  ボランティアの内容については、これまでの経験も今後の参加意向についても、イベントの準備関係を挙げる障害者等が多く、一度経験したものを思い浮かべ、再度やってみたいと思う傾向がみられた。  また、必要な支援としては、情報提供を求める意見が多い。誰にでも分かりやすい表現方法に配慮しつつ、様々なボランティア活動の情報を提供すれば、経験のない活動内容も含めて関心が高まり、障害者等によるボランティア活動が広まると考えられる。  他方、現在のところ、障害者団体や事業所は、ボランティアに参加する当事者を支援することは行うが、障害者団体として、あるいは事業所としての取組には積極的ではない。また、企業の取組に障害者等がボランティアとして参加することも少ない。今後、企業、あるいは障害者団体や事業所に、障害者等のボランティア活動に関する理解を求める取組や、ボランティア活動に参加する際の支援(例:会場までの送迎等)の検討が求められる。 P.267 (4) 情報提供の充実  障害者等の活動全般について、また特にボランティア活動について、情報提供の充実を求める意見が多い。最近ではインターネットを用いる人も増えているが、具体的な情報入手先はまだテレビ等が多く、通信手段としてファックスを求める回答も多い。  また、コミュニケーションの手段は障害の種別によって多様であり、平成28年4月に施行された障害者差別解消法も踏まえ、誰もが必要な情報にアクセスできるよう、多様な障害にあわせた情報提供の方法を都度検討するとともに、様々な場面で誰もが分かりやすい説明を心がけることが重要である。