トップページ > 食中毒 > こうしておこった食中毒【事業者編】 >界面活性剤混入の酒だれによる食中毒

こうしておこった食中毒【事業者編】⑨界面活性剤混入の酒だれによる食中毒

あらまし

 3月上旬、営業者から「前日に、お店を利用した客4名が喫食した食品に苦みがあり、舌のしびれを訴えたため、調べたところ、食品を焼く際に使用する酒だれの容器に廃油処理剤を誤って入れていたことがわかった」との連絡が保健所にありました。

 保健所が調査したところ、患者らは当該飲食店で、刺身、サラダ、海鮮盛合わせ等を喫食していました。海鮮盛合わせは、食材を卓上七輪で焼いて食べるメニューで、卓上の「酒だれ」をかけて、焼いて食べたところ、即座に強烈な苦みと舌のしびれを訴えました。また、隣席の客も同様の苦みを感じており、店長が確認したところ「酒だれ」の容器には廃油処理剤が入っていたことが判明しました。

 患者を診察した医師から食中毒の届出があったことから、保健所は当該飲食店が提供した「酒だれ」を原因食品とする食中毒と断定しました。

おこった原因

 当該飲食店では、卓上の七輪で客が自ら食材を焼いて喫食するメニューを提供しており、客は好みに応じて卓上の「しょうゆだれ」、「てりやきだれ」、「酒だれ」を使用することができました。各客席に置かれた焼きだれは厨房入口の調味料棚に置いてある容器から小分けしており、「しょうゆだれ」および「照り焼きだれ」はペットボトルに入っていました。また、「酒だれ」は紙パック入りの日本酒をそのまま使用していました。

 事件の当日、調味料棚には通常は置かれていない廃油処理剤が並んでいました。その容器はペットボトルであり、「しょうゆだれ」等の容器ときわめて似ていました。焼きだれは客席6か所に置かれますが、4か所は前日の残りの「酒だれ」が並べられ、2か所には廃油処理剤のペットボトルから小分けしたものが並べられてしまいました。

 「酒だれ」に使用する日本酒は、そもそも紙パックに入っていましたが、小分けを行ったのが採用3日目のアルバイト店員であり、誤りに気が付きませんでした。また、ペットボトルには廃油処理剤の名称が大きく明記されていましたが、ボトルの取っ手を持つとラベルは反対側に向いてしまい、さらに、ほぼ無色透明で色から判断できず、また日本酒とは粘性が異なっていたが店特有のたれとの思い込みがあったため、このような事件が起きてしまったと考えられました。

予防のポイント

 洗剤等の混入よる中毒は、食中毒として報告される事例は少ないものの、有症苦情として取り扱われる事例は毎年のように発生しています。発生原因の多くは、今回の事例のように、洗剤を食品容器に小分けしたため誤認してしまった事例です。また、調理担当者が通常と異なった場合にも発生しています。

 洗剤等の食品への混入を防止するためには、保管場所を食品と明確に区別すること、小分けする際は食品の容器を用いないこと等を従業員全員に周知することが重要です。

ページの先頭へ戻ります