乳がん検診の気になるあれこれ、お医者さんに聞いてみました。

40歳から受けられる乳がん検診。
どんな検査をするのか、
受診の際の準備、結果について...
不安なこと、気になることに、
お医者さんがお答えします!

(監修及び解説)
学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院放射線科乳房画像診断室長
臨床疫学HTAセンター研究教授
医学博士 角田 博子

登場人物
  • 庭野 サユリ(43歳)

    メグルの職場の頼れる先輩。不惑だって色々悩みは多いんです。

  • 時尾 メグル (31歳)

    しっかりもので少し天然なお姉さん。実家を出て彼氏と同棲中。

乳がん検診の気になるあれこれ、お医者さんに聞いてみました。

乳がん検診はなぜ大切?

メグル:

わからないことは、直接お医者さんに聞いちゃいませんか?
こちら、乳がんの専門医、角田博子先生が質問に答えてくださるそうです!

角田先生:

初めまして。不安なことやわからないことは何でも聞いてくださいね。

サユリ:

わっ、メグちゃん、すごい行動力!(笑)でも、あれこれ一人で悩むより、お医者さんに聞くのが一番よね。

メグル:

先生、今日はよろしくお願いします。まずは…なぜ乳がん検診を受けることが大切なのでしょうか?

角田先生:

はい、まず、メグルさんは「乳がん」を身近なことだと思いますか?

メグル:

ありえることとは思ってますが、身近か、と言われると…。

角田先生:

皆さんそうだと思います。でも、実は、日本人女性の9人に1人※1が乳がんになります。40代くらいになると、周りで実際に乳がんになった方のお話を聞くこともあるかもしれませんね。

サユリ:

9人に1人?! ほんとうに他人事じゃないですね…

角田先生:

そうです。乳がんは、皆さんに関係のあるがんなのです。ですが、早期発見・早期治療すれば、90%以上の人が助かる※2ことがわかっているんです。

サユリ:

早期発見・早期治療がポイントなんですね。

角田先生:

乳がんは、自分で乳房をチェックすることで見つけられる場合もありますが、小さながんや豊かなお乳の女性の深いところにあるがんはしこりとして触ることが難しいのです。だから、がんを早期発見するには、自覚症状がなくても、40歳になったら2年に1回定期的に乳がん検診を受診することが大切なんです。

※1 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
※2ここでいう「助かる」とは、診断時からの10年相対生存率です。
乳がんになった人の割合(全国・女性) 2018年
※上皮内がんを除く
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「がん登録・統計」(全国がん登録)
乳がんの進行度に応じた10年相対生存率 
※「ステージ」とはがんの進行度を表し、I期(初期)からIV期(末期)に分類されています。
出典:公益財団法人がん研究振興財団 がんの統計2021
サユリ:

でも、いざ検診を受けて、乳がんが見つかったらと思うと…少しこわいです。

角田先生:

こわいと思う気持ちは分かります。実際に、検診に行かないまま乳がんが進行した時点で病院に来る患者さんは、少なくありません。しかし、乳がんは早期発見できれば、治る可能性が高いがんなのです。また、「乳がんが見つかったらこわい」という不安を、「乳がんではなかった」という安心に変えるための検診でもあるんですよ。

サユリ:

たしかに、検診を先延ばしにしてもいいことはないですよね…!

メグル:

もし、気になる症状や心配なことがあったら、検診の時に一緒に見てもらえばいいのでしょうか?

角田先生:

検診は何も症状のない方が対象なので、検査の方法が決まっています。症状や心配なことがある場合には、検診の方法とは調べ方が違うこともあります。検診を待たずにすぐに医療機関を受診してくださいね。

検診の内容って?マンモグラフィ検査と超音波(エコー)検査の違いは?

メグル:

では、実際の乳がん検診ってどんなものなんでしょうか?

角田先生:

はい、乳がん検診では、質問(問診)とマンモグラフィ検査を行います。

乳がん検診の流れ
メグル:

具体的にどんなことを質問されるんですか?

角田先生:

生理周期などの月経の状況、妊娠・分娩・授乳の経歴、家族にがんになった人がいるかどうかなどに関する事項や、自覚症状の有無、検診受診状況をお聞きします。あらかじめ準備しておくとよいですね。

サユリ:

あの、マンモグラフィ検査と超音波(エコー)検査ってどう違うんですか? 改めてちゃんと知っておきたくて。

角田先生:

マンモグラフィ検査は、乳房専用のエックス線装置で、左右の乳房を片方ずつ挟み、乳房を圧迫して平坦にしてエックス線写真を撮る検査方法です。

サユリ:

ちょっと…痛い検査ですよね…(汗)

角田先生:

そうですね、個人差はありますが、乳房の圧迫により痛みを感じることもあります。月経前1週間を避けると痛みが少ないと言われていますよ。圧迫することで、重なっている乳腺が押し広げられて質の良い写真になります。隠れている異常を見つけやすくなり、また放射線による被ばく量も減らすことができます。リラックスして受けましょう。

サユリ:

わかりました!他に準備しておくことってありますか?

角田先生:

撮影に差支えないように、髪が長い場合は束ねて、ネックレスなどは外し、汗や制汗パウダーなどは拭き取っておくとよいですね。

マンモグラフィ検査の様子
メグル:

では、超音波(エコー)検査はどんな検査なんですか?

角田先生:

超音波(エコー)検査では、乳房の表面から超音波を発生する器械(探触子(たんしょくし)あるいはプローブといいます)をあてて、超音波の反射の様子を画像で確認する検査です。放射線による被ばくの心配がありません。

サユリ:

痛くなくて、被ばくもないんですね…。そう聞くと、マンモグラフィ検査より超音波検査のほうがいいような気がしちゃいますけど…。

角田先生:

乳がん検診の最大の目的は、乳がんによって亡くなる人を減らす(死亡率減少効果といいます)ことです。乳がんの死亡率を減少させることが科学的に認められているのは、乳がん検診では「マンモグラフィ検査」だけなんです。「超音波(エコー)検査」は死亡率減少効果を判断する証拠が不十分なので、区市町村が実施する住民検診として実施することは勧められていません。

サユリ:

がん検診にも種類があるんですか?

角田先生:

そうなんです。がん検診には大きく「対策型検診」「任意型検診」の2種類があって、それぞれ全く違う考え方で実施されています。

がん検診の種類
角田先生:

また、乳がん検診にはメリットだけではなくデメリットもあります。そのことを正しく理解した上で検診を受けることも大切なんです。「対策型検診」は、メリットがデメリットを上回る、“命を守るために受けるべきがん検診”なのです。

メグル:

私はまだ30代なんですが、すぐに検診を受けてもよいでしょうか…?

角田先生:

乳がん検診は40歳になったら2年に1回受けてください。30代の方に対する検診は、メリットよりデメリットが上回ってしまうので、お勧めできないんです。ただ、検診の対象となる年代以外でも、ご自分の乳房の状態を知っておき、何か気になることができたら、医療機関を受診するという意識(あとでお話しするブレスト・アウェアネスです)は大切です。

メグル:

自分の胸の状態を知っておく…。それなら今すぐでもできますね!

乳がん検診はどうやって受診するの?費用は高いの?時間はかかる?

メグル:

改めて、乳がん検診はどうやって受診するか、教えてください。

角田先生:

乳がん検診は、お住まいの区市町村で実施しています。受診券が区市町村から届く場合と、ご自身で申し込む場合があるので、詳しくはお住まいの区市町村のホームページなどでご確認くださいね。

サユリ:

検査の費用は…お高いんでしょうか…?(汗)

角田先生:

乳がん検診は、本来数千円以上かかりますが、費用の大部分を区市町村が負担してくれるので、一部自己負担(無料~2,000円程度)で受けることができますよ。

サユリ:

それはありがたいです!

角田先生:

女性の医師や技師のいる医療機関を選べる場合もありますし、平日に忙しい方は、土日や夜間に検診を受けられる場合もあります。検査自体も通常10~15分程度と短時間ですので、忙しくても検診を受けて欲しいと思います。

サユリ:

私は区から受診券が届きました。ちゃんと受診します!ところで、職場の健康診断でも乳がん検診があるみたいなのですが…

角田先生:

職場でがん検診を提供している場合もありますし、検診を行っている医療機関もあります。職場の検診や医療機関での検診を選ぶ場合は、検診施設のHPなどを確認して、<適切な乳がん検診に必要な項目>を充たしているか確認してみてくださいね。

メグル:

しっかり確認してから選ぶことが大事なんですね。

<適切な乳がん検診に必要な項目>
  • ・検診の内容は問診、マンモグラフィ(乳房エックス線検査)が行われているか。
  • ・視触診をする場合はマンモグラフィと併せて行っているか。
  • ・受診の際に、検診のメリットやデメリット、「要精密検査」になったら精密検査を必ず受診することなどを説明しているか。
  • ・日本乳がん検診精度管理中央機構「検診マンモグラフィ撮影認定診療放射線技師」がマンモグラフィを撮影しているか。
  • ・日本乳がん検診精度管理中央機構「検診マンモグラフィ読影認定医師」がマンモグラフィを読影しているか。

検査結果はどう通知される? 検診結果が「要精密検査」だったら?

メグル:

乳がん検診を受けた後、結果はどのようにわかるのでしょうか?

角田先生:

検診の結果は、基本的には1か月以内に受け取ることができます。郵送で届く場合と、受診して医師から説明を聞く場合があります。検診結果は、「精密検査不要」か「要精密検査」のどちらか一方です。

メグル:

もし「要精密検査」となったら、どうすればいいんでしょうか?乳がんってことなんでしょうか…?

角田先生:

「要精密検査」イコール乳がん、ではありません。検診だけでは、乳がんと断定することはできないため、より詳しい検査が必要なんです。乳がんの精密検査を実施できる医療機関を必ず受診しましょう。もちろん、異常がなかった場合でも、2年に1回定期的ながん検診の受診を継続していただくことが大切ですよ。

乳がん検診を受ける人が1000人いるとき、乳がんである人の割合
※未確定・未受診・未把握が15人いるため、人数不一致
※人数は、平成30年に都内の乳がん検診を受診した人を1000人とした場合の割合です。
出典:令和元年地域保健・健康増進事業報告
サユリ:

乳がんの精密検査では、どんな検査をするんですか?

角田先生:

乳がんの精密検査は、マンモグラフィの追加撮影と、超音波(エコー)検査、細胞診と組織診などを組み合わせて行います。

<精密検査の内容>
  • ◯ マンモグラフィの追加撮影
    乳房のエックス線検査で、画像で確認します。乳がん検診とは異なる、詳細な撮影の仕方を加えることもできるため、検診で行われたマンモグラフィより詳しい所見を読み取ることができます。
  • ◯ 超音波(エコー)検査
    乳房に超音波を当て、画像で確認します。乳腺の量が多く、マンモグラフィではしこりがわかりにくい場合でも、超音波検査ではしこりの診断をすることができます。
※精密検査は上記の検査を組み合わせて行い、穿刺吸引細胞診や針生検など、他の検査方法がとられることもあります。

「高濃度乳房」とは?

サユリ:

先生、私の友人が、乳がん検診を受診したら、「高濃度乳房」と言われたそうなんです。「高濃度乳房」ってなんですか?

角田先生:

「高濃度乳房」とは、乳腺の割合が多いタイプの乳房のことです。乳房は主に乳腺と脂肪からできていて、この割合は個人によって異なります。マンモグラフィでは、乳腺や乳がんのしこりは白く写り、脂肪は黒く写ります。なので、高濃度乳房の場合は、マンモグラフィで白い乳腺の陰に病気が隠れてしまうことがあり、がんが見つかりにくいと考えられているんです。

高濃度乳房の様子
画像提供:NPO法人乳がん画像診断ネットワーク
角田先生:

日本人の中で、高濃度乳房の割合は、年齢によって変わりますが40歳以上の約6割というデータもあるんですよ。

サユリ:

ええっ!6割も…。私はどうなんだろう。もし高濃度乳房だったらどうすればいいんですか?

角田先生:

まず、高濃度乳房は、乳房の構成(乳房内の乳腺と脂肪の割合)を表す言葉で、病気ではありません。高濃度乳房だからマンモグラフィが無駄ということでもないですし、追加の検査を受けるなど特別な対応が必要になるわけではありません。将来必ずがんになるということでもありません。乳がん検診の際に、高濃度乳房であることを受診者にお伝えするかどうかは、自治体判断とされていますが、もし高濃度乳房と通知があった場合は、下記のQ&Aを参照くださいね。

おわりに

角田先生:

実は、日本は40歳以上の乳がん検診の受診率が50%以下で、これは先進国の中でも極めて低い数字なんです。検診受診率が低いため、早期発見が遅れていて、乳がん死亡率の増加が続いているんですよ。一方、受診率の高いアメリカやイギリスでは、乳がん発生率が増加しているにもかかわらず、乳がん死亡率は減少し続けています。きちんと理解して検診を受けてくださいね。

サユリ:

2年に1度のことですもんね。乳がん検診のことをちゃんと知ったら、改めて前向きな気持ちで受診できそうです。

メグル:

角田先生、今日はありがとうございました!

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