「依存症」についてもっと知ろう 依存症は回復できる病気です ■依存症とは 健康や生活に問題をきたしても、特定の物質や行動ないし一連の行動の過程(プロセス)にのめり込み、「やめたくても やめられない」状態を「依存症」といいます。依存する対象は様々ありますが、大きく2つにわかれます。 物質への依存 例:アルコール、違法薬物(覚醒剤、大麻など)、処方薬・市販薬、たばこ、など 行動・プロセスへの依存 例:ギャンブル、ゲーム、盗癖、買い物、など  ※:医学的定義では、物質の使用および行動・プロセスに関するコントロールの障害を総称して嗜癖(しへき)とよびます。そして、ある特定の物質の使用に関してコントロールの効かなくなる病気を依存症、行動・プロセスについては行動嗜癖とよびます。このリーフレットではわかりやすくするため、物質の使用および行動・プロセスに関するコントロールの効かない状態も含め「依存症」と表現しています。 依存する対象は1つとは限らず、複数の対象に同時に依存したり、対象が次々と変わる場合もあります。 ■依存症により生じる日常生活の問題 依存症になると、依存対象(アルコールやギャンブルなど)に関連することを優先し、他のことに構わなくなっていきます。それにより、本人だけでなく家族や周囲の方の生活にも影響を及ぼします。また、依存対象による直接の影響もあります。その結果、これまで築いてきた人間関係や社会生活が崩れてしまいます。 影響の例 物質の影響や、睡眠・食事に構わなくなるため、健康を害する 勉強や仕事に集中できず、成績低下・留年・退学、退職につながる 隠れて借金をしたり、嘘をつく、怒る、暴力を振るうなどする 依存症を隠すために本人も家族も他者との交流が減り、周囲から孤立する ■依存症は脳のコントロール障害依存症は脳のコントロール障害 ●脳内報酬系が刺激され、さらに依存対象が欲しくなる 特定の物質の摂取により脳内で快楽物質が分泌され、その感覚を脳が報酬として認識すると、ますます摂取を繰り返すようになります。ギャンブル等の行動・プロセスへの依存症でも、同じ仕組みができているのではないかといわれています。 ●次第に耐性ができて、量や回数が増えていく 物質の使用や行動・プロセスが習慣化すると次第に耐性ができて、快楽物質が分泌されても報酬を感じにくくなります。その結果、同じくらいの快感を得るために物質の量や回数、行動・プロセスの頻度などが増えていきます。 ●苦しさが和らいだという経験が、依存を強める 「お酒を飲んだらよく眠れた」「ギャンブルをしたら嫌な気分を忘れられた」など苦しさが和らいだという経験が繰り返されると、同じような状況になった時に依存対象を渇望する(強く欲する)ようになります。 ●やめたり減らしたりすると、離脱症状が生じる 特定の物質がいつも体内にある状態が続くと、脳はそれが普通の状態だと認識し、体内から物質が減ると様々な不快な症状が出ます。これを離脱症状といいます。 離脱症状の例 症状は、物質や人により異なります 頭痛、吐き気、嘔吐、イライラ、不安、意欲の低下、不眠、発熱、発汗、寒気、血圧・心拍数の上昇、体の痛み、手または体のふるえ、けいれん、幻覚、幻聴、など ギャンブルやゲームなどへの依存症でも、イライラや落ち着きのなさなどの一部の離脱症状が起こると言われています。 離脱症状を和らげるために物質を再度使用したり、行動・プロセスを再開してしまうことが多く、自分の力だけでやめることは難しいのです。 このように、「やめたくても やめられない」という依存症は、意志の弱さや根性のなさ、性格の問題ではなく、誰でもなりうる「脳の病気」なのです。 ■なぜ依存症になるのかなぜ依存症になるのか 自分の楽しさや快楽のためだけではなく、苦痛を和らげるために物質の使用や特定の行動を繰り返しているうちに、依存症になると考えられています。 また、依存症の方のかなりの割合に、何らかの生きづらさの問題があると言われています。辛い経験から他人を信じられなくなると、物事や人間関係がうまくいかないなど困ったことがあった時に周囲に援助を求めることができず、一人で抱え込んでしまいます。一人では解決できず苦しみが続く中で、生きのびるために依存対象を使用せざるを得なかったと考えられています。そのため、依存症は「孤独の病気」とも言われています。 ■依存症からの回復 依存症は回復できる病気です。 回復とは単に「やめる/やめ続ける」ことではなく、「依存対象にとらわれずに、自分らしく生きていける」ことです。 回復に必要なことは、医療機関での治療のほか、自助グループでの交流や困りごとの相談など、孤立せず正直に話し合える場をもち続けることです。そうすることで、万が一依存対象の物質を再使用したり行動を再開したとしても、また回復の道に戻ることができます。 ■家族や周囲の方へ 依存症の問題は、家族や周囲の方だけで解決することがとても難しく、気がつかないうちに家族等の健康や生活にも影響を与え、社会から孤立しがちになります。困っている方や問題に気づいた方から支援者とつながることが、解決の第一歩となります。 相談機関では、まず相談者から困っていることを伺い、一緒に問題を整理していきます。家族等や本人の置かれている状況に応じて、他の専門機関への相談を提案することもあります。相談者が元気を取り戻し、依存症について学び、本人への対応の仕方を身につけることが、本人の回復へとつながります。 ■医療機関 かかりつけ医療機関や相談機関も活用し、依存症診療を行う精神科や心療内科を受診しましょう。東京都では依存対象ごとに「東京都依存症専門医療機関」を選定しています。 医療機関では、必要に応じて身体も含めた検査や診察を行い、心身の状態を確認した上で治療が提案されます。治療は依存対象や使用期間等によっても異なります。 ●身体症状への対応 物質の使用による身体症状(アルコールや市販薬による肝機能低下など)や離脱症状など、身体面の治療を行います。 ●精神症状の治療 物質の使用による後遺症(幻覚や妄想など)や、元々あった精神疾患、併存した精神症状(うつや不安など)の治療を行います。 ●心理療法 回復をめざして、依存症の背景にあるこころの問題に取り組むほか、渇望を招く引き金やその対処方法などをグループや個別面接で学びます。 ●入院治療 通院での治療が難しい場合や生活環境を整える必要がある場合などは、入院治療を勧められることがあります。 ●その他 医療機関によっては、家族向けに講座や交流会を行っているところもあります。 ■自助グループ・家族会 依存症からの回復をめざす当事者や家族等が自主的に運営するグループです。多くの場合、匿名で参加でき、いずれもプライバシーは守られます。 グループメンバーと体験や想いをわかちあうことで、気づきや問題解決のヒントを得るとともに、同じ境遇の仲間を得ることで孤独・孤立を防ぎます。 様々なグループがあり、依存対象別、女性メンバー限定、土日や夜間に開催しているグループもあります。 また、当事者だけでなく家族対象のグループもあります。本人と同様に、家族等も孤立せず、正直に話し合える場をもつことは大切です。 ■公的な相談機関公的な相談機関 本人だけでなく、家族や周囲の方からの相談も可能です。まずは、問題だと感じている方が相談機関につながり、どのように対応するかご相談ください。 相談は無料で、プライバシーは厳守します。 ◆東京都立(総合)精神保健福祉センター 東京都立(総合)精神保健福祉センターでは、「東京都依存症相談拠点」として、アルコールや薬物、ギャンブル等の依存症についての相談や、本人向けプログラム・家族講座等も実施しています。まずは、お住まいの地域を担当するセンターに電話でご相談ください。 また、各種の依存症に関するリーフレットを発行しており、中部総合精神保健福祉センターのホームページに掲載しています。 ◎東京都立中部総合精神保健福祉センター 〒156-0057 世田谷区上北沢2ー1ー7  相談電話:03-3302-7711(年末年始を除く平日9時〜17時) 担当地域:港区、新宿区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、練馬区 ◎東京都立精神保健福祉センター 〒110-0004 台東区下谷1ー1ー3 相談電話:03-3844-2212(年末年始を除く平日9時〜17時) 担当地域:千代田区、中央区、文京区、台東区、墨田区、江東区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区、島しょ地域 ◎東京都立多摩総合精神保健福祉センター 〒206-0036 多摩市中沢2ー1ー3 相談電話:042-371-5560(年末年始を除く平日9時〜17時) 担当地域:多摩地域  ◆保健所・保健センター お住まいの地域ごとに相談窓口があります。各自治体の保健所・保健センター等にお問い合わせください。 令和6年2月発行 登録番号(5)6