テレワークとメンタルヘルス テレワークは、時間の有効活用や業務の効率化、心身の負担軽減などのメリットがある一方で、通常の職場から離れてパソコンなどを使用して仕事をするため、職場での勤務のときとは違ったストレスがみられます。このため、適切に行われない場合には心身の健康上の問題が生じることもあります。 <テレワークによるメンタルヘルス不調の要因> テレワークで働いている人は、以下のような心配や不安を感じることがあります。 仕事のこと 「コミュニケーション不足、孤独感・孤立感」 「労働時間の増加」 「仕事の成果中心の評価へのプレッシャー」 「テレワークと出社勤務での評価の差への不安」 生活のこと 「仕事とプライベートの区別の曖昧さ」 「外出しないことによる閉塞感」 「生活リズムの乱れ」 「運動不足・体力の低下」 「飲酒時間・飲酒量の増加」 環境のこと 「自宅の作業環境の未整備」 「自宅での仕事への集中しづらさ」 「育児や介護、家事などを同時に求められる」 「同居家族などとの対人関係ストレス」 <メンタルヘルス不調のサイン> ストレスを解消できずに溜めこんでしまうと、こころや身体、行動に変化が現れてきます。以下はその例です。 ◎こころの変化 イライラ、ささいなことに極端に反応する 強い不安、気持ちが落ち着かない 気分が沈む、無力感、物事に集中できない、何もやる気がしない  疑り深い、警戒心が強い、など  ◎身体の変化 食欲低下・体重減少(あるいは過食・肥満) 寝つきが悪い、熟睡できない、朝早く目が覚める 動悸、眼の疲れ、肩こり、頭痛、倦怠感、下痢や便秘、など ◎行動の変化 衝動的・感情的な行動をとる 付き合いに消極的になり周囲を避けるようになる 飲酒や喫煙が増える 落ち着きがなくなる 身だしなみが乱れる、など メンタルヘルス不調のサインがみられたら ・上司や同僚、友人、家族など、まず周囲の信頼できる人に相談しましょう。 ・不安や抑うつ、不眠などの心身の症状がひどかったり続いたりする場合は、産業医等の産業保健スタッフ、かかりつけ医などに相談しましょう。精神科や心療内科の受診を勧められたら速やかに受診しましょう。 ・周囲の人のメンタルヘルス不調に気づいたら、その本人の話に耳を傾け、必要に応じて産業保健スタッフなどへの相談や受診を勧めましょう。 <テレワーク実施時のメンタルヘルス:個人で行う予防対策> ●仕事とプライベートを切り分けましょう ライフ・ワーク・バランスを意識することで、仕事への充実感・満足感が高まり、仕事への意欲を向上させます。 ・作業環境を整備する。仕事部屋、仕事専用スペースを作る。よい姿勢を保ちやすいデスクやチェアを選ぶ。室内の明るさや温度・湿度にも配慮する。 ・就業時間は守り、長時間労働とならないようにする。 ・メールやチャットなどによる業務上の連絡は、就業時間以外はしないようにする。 ・昼休みは、デジタル画面から離れて休憩する。 ・出勤時と同様に、毎朝の身支度はきちんと行う。 ・育児や介護などとの“ながら仕事”は避ける。 ●コミュニケーションを積極的にとりましょう テレワーク中に孤独や不安を感じることがあります。意識的にコミュニケーションを図ろうとすることによって、今まで以上にコミュニケーションの回数が増え、信頼関係が高まります。 ・Web会議ツールや電話も活用する。 ・1日に一回は時間を決めて、声や画像を通じた連絡を行う。 ・業務以外のことも気軽に話せるよう、チャットなどで雑談を行う。 ・Web会議では可能な限りマスクを外し、表情が見られるように工夫する。 ●生活リズムを保ち、健康管理に努めましょう 生活習慣が乱れたり、身体的な不調を感じることがあります。自己管理が大切です。 ・食事・睡眠は規則正しくする。 ・飲酒の時間や量に注意する。 ・就業時間以外のインターネットやテレビなどに接する時間を制限する。 ・昼休みや通勤時間帯に散歩をする、軽いストレッチや筋肉トレーニングをするなど、生活の中に通勤に代わる運動を取り入れる。 ・健康診断やストレスチェックの結果を活用する。 <テレワーク実施時のメンタルヘルス:職場が配慮すべきこと> テレワークの適切な運用に向けて、課題と対応のポイントを理解しましょう。 @ テレワークでのメンタルヘルスケア テレワークでは、心身の状態が見えにくくなります。管理監督者はより一層コミュニケーションを強化して信頼関係を構築し、相談しやすい体制を作ることが大切です。メンタルヘルス不調に気づき、早期の対応に繋がります。 A コミュニケーション機会の確保 テレワークでは、対面での会話や雑談の機会が失われることで、コミュニケーションをとる機会が減り、孤独感・孤立感を感じやすくなります。雑談用チャットの開設など、業務以外の雑談ができる場を提供しましょう。出社時は積極的に対面コミュニケーションをとる場を設定するなど、有効活用しましょう。 B 時間管理 テレワークでは、勤務時間管理が曖昧になり、長時間労働に気づきにくくなります。テレワークでも始業時間と終業時間をしっかり管理する、就業時間以外の業務関連のメールやチャットなどを禁止するなどの労務管理が求められます。 C O J Tや人材育成 テレワークでは、上司や先輩からの指導が受けづらいとの指摘があります。チャットツールや Web会議ツールを活用する、定期的な連絡の他にも気軽に質問や相談ができる仕組みを作るなど、工夫する必要があります。 D 公正な評価 テレワークでは、成果中心の評価になりがちです。成果だけでなくプロセスをどう評価するかなど、テレワークにも対応した評価を示す必要があります。また、出勤者とテレワーク勤務者の間で評価に不公平が生じないよう工夫する必要があります。 E ハラスメントの防止 テレワークでは、一対一でのパワーハラスメントが発生しやすくなります。私生活に対する不用意な言動や過度な監視や報告を求めるなどのリモートハラスメントも起こりやすくなります。ハラスメント防止の周知啓発など、テレワークの際にもハラスメント防止対策を適切に講じる必要があります。 F 相談窓口・体制の整備 テレワークでは、対面や電話で行っていた相談がしにくくなります。テレワークにおいても、メールやチャット、オンライン相談なども活用した産業保健スタッフによるケアができるように整備し、利用を周知することも必要です。 <テレワークとメンタルヘルスに関する情報、相談機関等> ○働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」(厚生労働省) 働く人やそのご家族、職場のメンタルヘルス対策に取り組む事業者などに向けて、メンタルヘルスケアに関するさまざまな情報や相談窓口を提供しています。 テレワークでのメンタルヘルス対策について https://kokoro.mhlw.go.jp/telework 東京都立(総合)精神保健福祉センター こころの健康に関する相談を受けています。家族や関係機関の方も相談できます。 ◎東京都立中部総合精神保健福祉センター 〒156-0057 世田谷区上北沢2ー1ー7  相談電話:03-3302-7711(平日9時〜17時) 担当地域:港区、新宿区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、練馬区 ◎東京都立精神保健福祉センター 〒110-0004 台東区下谷1ー1ー3 相談電話:03-3844-2212(平日9時〜17時) 担当地域:千代田区、中央区、文京区、台東区、墨田区、江東区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区、島しょ地域 ◎東京都立多摩総合精神保健福祉センター 〒206-0036 多摩市中沢2ー1ー3 相談電話:042-371-5560(平日9時〜17時) 担当地域:多摩地域全域 令和5年1月発行 登録番号(4)3  本リーフレットは、「テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き」(2022、厚生労働省)を参考に、労働者や職場の注意すべき点などをまとめました。