東京都 大人の発達障害 その特性の理解と対応 発達障害  大人の場合 【発達障害とは】  発達障害はいくつかに分類されており、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)などが含まれます。これらは、生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点が共通しています。諸説ありますが、自閉症スペクトラム障害とADHDを合わせると100人のうち2〜3人の方が該当すると言われています。発達障害は、しばしば複数の障害が重なって生じます【図】。年齢や環境等によって生じる困りごと等も人によって異なります。“個人差がとても大きい”という点が「発達障害」の特徴です。 【自閉症スペクトラム障害(ASD)】  自閉症スペクトラム障害は、これまでのアスペルガー症候群や高機能自閉症などの診断を統合した診断名です。スペクトラムとは「連続体」の意味で、特性が強い人から軽い人までさまざまな方がいます。自閉症スペクトラム障害の特性は「社会的コミュニケーションの障害」、「行動・興味・活動の限定と反復(こだわり)」、「感覚過敏」、「想像力の障害」です。それらの特性は子どもの頃には目立たなくても、大人になってから問題化することがあります。アスペルガー症候群(AS)は、ASDのうちで知的や言語の発達に遅れを伴わない一群で、成長するにつれてコミュニケーションの障害が目立ってくる場合が多くみられます。 【注意欠如・多動性障害(ADHD)】  注意欠如・多動性障害には「注意力・集中力の欠如」と「多動性と衝動性」という大きく2つの特徴があります。このうち「多動性と衝動性」は年齢とともに改善することが多いため、大人では「注意力・集中力の欠如(ADD)」が目立つ場合が多いです。大人になると、自らで考えて達成しなければいけない課題が増え、仕事や家庭生活の中で、時間の管理や仕事の段取りなどが上手くできずに様々な支障が出てくる傾向があります。 【発達障害における“ 二次障害” とは】  発達障害のうち知的発達に遅れが無い方の場合、発達障害の特徴が周囲に理解してもらえずに誤解をされてしまうことがあります。発達障害の方は、ストレスを言葉で表現することが上手くできない場合も多く、環境的な要因の結果として生じる様々な精神的な症状のことを“二次障害”と呼びます。 【主な二次障害】 抑うつ気分や、不安焦燥感が続くことがあります。急に大きな不安や動揺(パニック)に見舞われる時があります。その際に、その場にそぐわない行動が示されることもあります。幻覚や妄想が生じる場合があり、妄想は被害的な内容であることも多くみられます。 また、大人の発達障害は、ギャンブルやアルコール・薬物等の依存、ゴミ屋敷問題やセルフネグレクトなどと関連する場合もあります。 【発達障害の方への対応】  発達障害の方は“個人差が大きい”ので、望ましい対応方法も一律ではなく、個別的・具体的にかなり違ったものとなります。家族や関係機関などが、本人の考え方や行動様式を理解して関わることにより、本人も家族も落ち着いて過ごすことができます。また、本人が自身の個性・特性や現在の状態に気づき認識して、苦手なことをカバーし長所を伸ばすように行動することで、自己肯定感を保ちつつ二次障害を予防することができます。 【具体的な対応の例】 周囲の人は…指示や助言は具体的かつ明確に、5W1H(いつ・どこで・なにを・なぜ・どうやって)を意識して行います。音声による指示や説明だけでなく、視覚的な情報も活用して理解を促します。逆に、視覚的な情報が苦手な場合には、紙面やパソコン画面だけでなく、音声による情報提供も加えて行います。大切な情報は「皆さん」に伝えるだけでなく「△△さん」と個別に呼び掛けて伝達や説明をします。その時に必要な情報に絞って提供します。(一度に複数の情報伝達をしないよう配慮します。)始業前に「今日の業務予定」を、終業前に「今日の業務遂行状況と明日の業務予定」を本人と上司で確認します。 【具体的な対処方法の例】 本人は… “得意なこと”と“苦手なこと”の落差が大きいタイプであるなら、あらかじめ周囲の人に、そのことを知ってもらっておくと良いでしょう。やるべき仕事をすべて書き出し、順番をつけ、見えるところに貼る等の工夫をします。(ノートや付箋などを利用します。)自分で優先順位がつけられないときは、上司や周囲の人に優先順位を決めてもらうために相談します。物によって片づける収納場所を決めておきます。一度に全てを改善しようとせず、できそうなことから1つを選んで、一定期間取り組んでみます。 発達障害での困りごとへの対応方法は、個人差が大きいことが分かっています。個別的・具体的に本人にとって望ましい対応については、本人・家族・関係機関等がそれぞれ知恵を出し合い、共通した考え方や方法をもって対応していくことがとても大切です。 本人も家族も周りの人も、一人で悩まず、専門機関に相談してみましょう。 相談機関 (プライバシーは厳守します) ◆東京都発達障害者支援センター(通称:トスカ) 〒156-0055 東京都世田谷区船橋1−30−9 問い合わせ先電話:03(3426)2318 開設時間  受付:月・火・水・木・金(9時〜17時)       相談:月・火・木・金(9時30分〜17時) ※年末年始・祝祭日は除く ◆東京都立(総合)精神保健福祉センター 東京都立中部総合精神保健福祉センター 〒156-0057 東京都世田谷区上北沢二丁目1番7号 相談電話:03(3302)7711(平日9時〜17時) 担当地域: 港区、新宿区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、練馬区、 東京都立精神保健福祉センター 〒110-0004 東京都台東区下谷一丁目1番3号 相談電話:03(3844)2212(平日9時〜17時) 担当地域: 千代田区、中央区、文京区、台東区、墨田区、江東区、豊島区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区、島しょ地域 東京都立多摩総合精神保健福祉センター 〒206-0036 東京都多摩市中沢二丁目1番地3 相談電話:042(371)5560(平日9時〜17時) 担当地区:多摩地域全域 ◆保健所・保健センター等 都の保健所や区の保健センター等、お住まいの地域ごとに相談窓口があります。各保健所等にお問い合わせください。 令和2年3月発行