「薬物依存」を正しく理解するために 東京都立(総合)精神保健福祉センター 「薬物依存」は回復できる病気です 「薬物依存」は慢性の病気です  気力だけでは治りません  専門機関に相談しましょう   ●「精神依存」=渇望 ・通常では得られない高揚感・多幸感・覚醒感が得られ、不安感から逃れるため渇望に押しつぶされて乱用を繰り返してしまいます ・精神依存は長期にわたって継続します ・精神依存を伴わない依存症はありません ●「身体依存」=物質乱用中断による離脱症状 ・不快な離脱症状から逃れるために乱用を繰り返します ・意識障害・振戦・痙攣・抑うつ気分・不安焦燥感などを引き起こすことがあります ・身体依存があまり形成されない物質もある(危険ドラッグ・コカイン・大麻など)が、精神依存の形成は強力であり要注意です ●「耐性」=同じ量では満足できなくなる ・同じ効果を得るために必要な薬物量がどんどん増えていきます ・そのためにお金を浪費し、経済的にも行き詰まり、犯罪行為に至ることもあります ●「精神病症状」=慢性中毒症状として出現 ・幻覚や妄想が出現し、つじつまの合わない言動や独語が見られたりします ・興奮状態になったり自傷他害行為に及ぶこともあります 「薬物依存」は慢性疾患です 依存の対象はしばしば代わります 否認・過小視されがちな病気です 自殺率の高い病気です 回復できる病気です 厚生労働省「ご家族の薬物問題でお困りの方へ」より引用の図 依存(Dependence)自己コントロールできずにやめられない状態、乱用の繰り返しの結果 乱用(Abuse)薬物を社会的許容から逸脱した目的や方法で自己使用すること 慢性中毒(Chronic Intoxication)依存に基づく乱用の繰り返しの結果 覚せい剤精神病・有機溶剤精神病・身体症状がみられる 急性中毒(Acute Intoxication)乱用の結果 急性アルコール中毒・有機溶剤急性中毒・覚せい剤・急性中毒・身体症状がみられる 精神依存の場合 乱用の繰り返し→渇望→(耐性)→渇望→薬物探索行動→乱用の繰り返し 身体依存の場合 乱用の繰り返し→(耐性)→断薬→退薬症状(離脱症状)→薬物探索行動→乱用の繰り返し ●「危険ドラッグ」とは ・乱用させることを目的に作られた、合成化合物(デザイナーズドラッグ)です ・精神依存の形成を目的に作られているため、身体依存の形成は少ないですが、これは体に害があると思わせないためです ・大麻類似作用をする合成カンナビノイドのほか、覚せい剤類似作用を示すα-PVP、LSDに類似した強力な幻覚作用、嘔気、散瞳を示す5-MeO-DIPT(いずれも違法薬物)などの類似化合物が含まれています ・覚醒剤に次いで依存患者が多い薬物です(2012年全国精神科病院調査より) ・覚醒剤依存者が精神病症状出現や検挙を機に、危険ドラッグにシフトし、ハマって止められなくなる例が少なくありません ・成分が不明で、副作用で命を落とすこともあります ●「市販薬」「処方薬」への依存とは ・市販の睡眠導入剤・かぜ薬・咳止め・鎮痛剤、処方薬でも抗不安薬や睡眠導入剤などの中には依存性が高い薬物もあります ・市販薬・処方薬の服用は目的としては正当ですが、飲み方が正当でなければ(大量・頻回使用など)乱用状態で、依存です ●「薬物依存」から回復するには ・底付き(依存による絶望感)を待たずに直ちに治療を開始します ・認知行動療法プログラムへ参加しましょう  (薬物が欲しくなる気持ちを招く引き金への対処や回復過程などを学びます) ・自助グループに参加しましょう(一人での治療は困難です、仲間が必要です) ・薬物療法(衝動的な渇望欲求、不安感や抑うつ気分、怒りからの渇望を予防します) ・必要に応じて専門病棟への入院(依存のない規則正しい生活を取り戻します)   ■外的な引き金から遠ざかりましょう ・薬物を使いたくなる環境(人・場所・物)から離れます  ■内的な引き金から遠ざかりましょう ・薬物を使いたくなる気持ちにならない工夫をします H.A.L.T.(ドイツ語でSTOP)に注意!  H(Hungly)空腹感  A(Angry)怒り L(Lonery)孤独  T(Tired)疲労 ■セーフティゾーンを設定しましょう ・この場所なら、この人となら絶対に薬物を使わない、という場所を作っておきます 相談機関 一人で悩まず、お近くの保健所・保健センター・精神保健福祉センターへ相談しましょう。ご家族だけでも相談できます。(プライバシーは厳守します)まずは、電話でご相談ください。必要な場合には、来所相談をご案内いたします。相談は無料です。 東京都立中部総合精神保健福祉センター 〒156 -0057 東京都世田谷区上北沢 2-1-7 担当地域:世田谷・杉並・渋谷・新宿・品川・大田・中野・練馬・港・目黒の各区 03-3302-7711 9時〜17時(祝日と年末年始を除く) 東京都立多摩総合精神保健福祉センター 〒206 -0036 東京都多摩市中沢 2-1-3 担当地域:多摩全域 042-371-5560 9時〜17時(祝日と年末年始を除く) 東京都立精神保健福祉センター 〒110 -0004 東京都台東区下谷 1-1-3 担当地域:千代田・中央・文京・台東・墨田・江東・豊島・北・荒川・板橋・足立・葛飾・江戸川の各区と島しょ地域 03-3844-2212 9時〜17時(祝日と年末年始を除く)