市販薬・処方薬の乱用・依存 東京都立(総合)精神保健福祉センター 市販薬・処方薬への依存とは ●市販薬や処方薬関連の精神疾患では、特に市販薬関連で受診する方が増加傾向にあります。 ●市販薬や処方薬の中には、誤った用法や用量で服薬(乱用)し続けることにより依存症になるものがあります。 ●急に薬をやめたり減らしたりすると離脱症状があらわれることがあり、不快な離脱症状を和らげるために新たな使用を繰り返しがちになります。 ●依存症になると自力ではやめられず、心身の健康や社会経済面など生活上の支障が出ることがあります。 乱用とは:ここでは、大量もしくは頻回に使用する、医師の指示や添付文書とは異なる使用をするなど、本来とは違う使い方をすること 依存とは:乱用を繰り返しているうちに、薬物の使用がコントロールできず自力ではやめられなくなってしまう状態 離脱症状とは:薬物の中止や減量に伴い出現する発汗、手の震え、嘔気嘔吐、イライラする、落ち着かない、不安、幻覚、興奮などの症状 市販薬への依存について どのような成分を含む薬剤で依存に注意が必要ですか かぜ症状の緩和や、寝つきを改善するなどの市販薬の成分でも、依存に注意が必要なものがあります。薬剤の添付文書等に書かれた成分を確認しましょう。 ●エフェドリンやコデイン、メチルエフェドリン、ジヒドロコデインなど(総合感冒薬や鎮咳薬の一部) ●ブロムワレリル尿素(解熱鎮痛薬、催眠鎮静薬の一部) ●カフェイン(総合感冒薬の一部や「エナジードリンク」にも含まれ、飲みすぎに注意) ●最近新たに鎮咳薬(デキストロメトルファンなど)や抗アレルギー薬(ジフェンヒドラミンなど)の乱用が問題になっています。 どのような人が市販薬に依存しているのでしょうか ●市販薬は10 歳代では最も乱用されている薬物です。 ●家族や学校、職場など周囲に相談することができず、自分一人で抱え込み心理的に孤立し、薬の力を借りて困難を乗り越えようとして、悪循環に陥ってしまうこともあります。 どのような気持ちで市販薬を乱用するのでしょうか ●「不眠や不安、憂鬱な気分を軽くしたい」「自暴自棄になって」などの思いで使用することが多いとされています。 ●自らの不安や葛藤、自己不全感などを解消するために「自己治療目的」で乱用する場合もあります。 ●苦痛を和らげるために、いつの間にか頻回かつ大量の使用となることもあります。 ●「死にたい」「消えてしまいたい」という思いを抱き、大量服薬やリストカットなどの自傷行為につながる場合も少なくありません。 市販薬依存による影響とは ●長期に大量使用することで身体への悪影響が出現することがあります。 ●市販薬への依存が、大麻や覚醒剤などの違法薬物への依存のきっかけ(ゲートウェイ)となることもあります。 処方薬への依存について どのような薬剤が依存につながるのでしょうか ●睡眠薬・抗不安薬、鎮痛薬等を医師の指示とは異なった量・回数で使用すると依存症になることがあります。 ●最も乱用されている処方薬はベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬です。 ●鎮痛薬では、モルヒネなどの麻薬性の薬剤だけではなく、非ステロイド系鎮痛薬(NSAIDs)やプレガバリンなどの非麻薬性の薬剤の一部にも依存性があることが知られています。 どのような人が処方薬に依存しているのでしょうか ●幅広い年代で乱用され、20 歳代以上では覚醒剤に次いで乱用されています。特に70 歳代以上では処方薬依存の割合が高いことが知られています。 ●うつ病など他の精神疾患を合併していることが多く、アルコール問題を抱えていることが3割程度あります。 どのように処方薬の乱用がはじまるのでしょうか ●医師に処方された薬を、「効かなくなった」からと自己判断で量や回数を増やしてしまうことがあります。 ●複数の医療機関を受診して同じ種類の薬を処方されるうちに、過剰摂取から乱用につながることもあります。 処方薬依存による影響とは ●長期に大量使用することで身体への悪影響が出現することがあります。 ●頭痛の解消目的で鎮痛薬を乱用することでかえって頭痛が悪化したり(薬物乱用頭痛)、睡眠薬を突然やめることで服用前より強い不眠が出現したりします(反跳性不眠)。 どうすれば市販薬・処方薬の乱用や依存から 回復できるのでしょうか 依存症になっても回復は可能です。行為そのものを止めさせることばかりに目を向けず、行為の背景にある不安や孤立、孤独などの解決が不可欠です。依存の対象は入れ替わることもあるため、市販薬・処方薬の代わりにアルコールなどに頼ることはやめましょう。 依存しなくてすむ方法や取組みを考えてみましょう ●どんな時に薬を使いたくなるのか・使わずにすんだのか、記録をつけてみましょう。 ●薬に頼らないですむような「代わりの行動」を探してみましょう。 ●リラックスできる方法を考えてみましょう。 つらい気持ちや困ったことを相談しましょう ●信頼できる相手につらい気持ちや困っていることを話してみましょう。 ●精神保健福祉センター(依存症相談拠点)や保健所で相談することもできます。 ●市販薬や処方薬の依存症の自助グループへ参加することも回復に役立ちます。 医療機関や薬局で相談しましょう ●特に処方薬の場合、自己判断での減薬・断薬は危険です。 ●医師や薬剤師に現状を伝えましょう。依存性の少ない薬への変更など今後の治療や注意事項について相談しましょう。 ●必要に応じて、依存症の専門医療機関の受診も検討しましょう。 家族や周囲の人の手助けも大切です ●家族や周囲の人が、正しい知識や対応を身につけることは重要です。 ●相談機関の利用や家族講座・家族会などに参加してみましょう。 ●本人とのコミュニケーションを工夫し、関係の再構築を目指しましょう。 公的な相談機関公的な相談機関 ◇東京都立(総合)精神保健福祉センター 東京都立(総合)精神保健福祉センターでは、「東京都依存症相談拠点」として、アルコールや薬物、ギャンブル等の依存症について、本人や家族等、あるいは関係機関からの相談を受けています。 ◎東京都立中部総合精神保健福祉センター 〒156-0057 世田谷区上北沢2ー1ー7  相談電話:03-3302-7711(平日9時〜17時) 担当地域:港区、新宿区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、練馬区 ◎東京都立精神保健福祉センター 〒110-0004 台東区下谷1ー1ー3 相談電話:03-3844-2212(平日9時〜17時) 担当地域:千代田区、中央区、文京区、台東区、墨田区、江東区、豊島区、 北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区、島しょ地域 ◎東京都立多摩総合精神保健福祉センター 〒206-0036 多摩市中沢2ー1ー3 相談電話:042-371-5560(平日9時〜17時) 担当地域:多摩地域  各センターで、本人向けの依存症回復支援プログラムや、家族が正しい知識や対処法を学ぶ家族講座を実施しています。 ◇保健所・保健センター お住まいの地域ごとに相談窓口があります。各保健所・保健センター等にお問い合わせください。 令和6年3月 登録番号(5)13